1. はじめに

 ビッグデータの管理・運用で注目を浴びることとなった結果整合性(eventual consistency)ですが,賛否両論あるようです.否定的な意見は,たとえば,クレップマン(Martin Kleppmann)[1]の
著作に見ることができます.この著作,結構多くの方々がお持ちかと思いますが,クレップマンは複
製を行うデータベースのほとんどは,少なくとも結果整合性を提供しているとしながらも,これは非
常に弱い保障であり,複製がいつ(最終値に)収束するのかについては何も語られていなく,収束す
るときまで,読取りの結果が何になるのか,あるいはそもそも何も返さないのかは分からない,とク
レームしています.さらに,CAP 定理の対象範囲は非常に狭く,考慮しているのは 1 つの一貫性モ
デルと 1 種類のフォールト(つまり,ネットワーク分断)だけで,ネットワークの遅延,落ちている
ノード,あるいは他のトレードオフについては何も語っていない.したがって,CAP 定理は歴史的
には大きな影響力があったものの,システムの設計における実際的な価値はほとんどない,と述べて
います(文献[1]の 9 章「一貫性と合意」).

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