Zabbix 7.0 の紹介

本記事では、Zabbix 7.0.0 で追加された機能や変更点について解説します。

Zabbix 7.0 の変更点は Zabbix 公式サイトの以下のページに記載されています。

Zabbix 7.0 の主な機能追加・変更点を以下に挙げます。

ソフトウェアライセンスの変更

Zabbix のソフトウェアライセンスが AGPLv3 に変更になりました。(これまでは GPLv2 でした)

ソフトウェア更新チェック

ソフトウェア更新チェックがデフォルトで追加されました。Zabbix フロントエンドは、パブリック Zabbix エンドポイントと通信して更新をチェックします。
利用可能な Zabbix ソフトウェア更新に関する情報は、以下で表示されます。

  • [レポート] -> [システム情報]
  • [システム情報] ダッシュボード ウィジェット(オプション)

Zabbix server/proxy の設定ファイルで、AllowSoftwareUpdateCheck=0 を設定すると、ソフトウェア更新チェックを無効にできます

poller プロセスの非同期実行による監視の効率化

poller プロセスが監視タイプ毎に細分化され、かつ単一のプロセスで複数の監視値取得処理を同時に実行できるようになりました。

  • agent poller:Zabbix エージェントタイプに対する非同期 poller プロセス
  • http agent poller:HTTP エージェントタイプに対する非同期 poller プロセス
  • snmp poller:SNMP エージェントタイプに対する非同期 poller プロセス (walk[OID] および get[OID] アイテムのみ)

これらの poller プロセスでは内部で複数のスレッドが非同期で監視値の取得処理を実行し、監視対象からのレスポンスを待たずに新しい取得処理を開始することができます。
同時実行数はプロセス単位で最大 1,000 まで設定することが可能です。

従来の poller プロセスは依然として存在しており、上記の監視タイプ以外のパッシブ監視を実行しますが、こちらでは非同期実行は行われません。

各 poller およびの同時実行数の設定パラメータは以下の通りです。

パラメータ 説明 デフォルト値 設定可能な値
StartPollers poller プロセスの起動数 5 0 – 1,000
StartAgentPollers agent poller の起動数 1 0 – 1,000
StartHTTPPollers http poller の起動数 1 0 – 1,000
StartSNMPPollers snmp poller の起動数 1 0 – 1,000
MaxConcurrentChecksPerPoller poller 毎の最大同時実行数 1,000 0 – 1,000

また、HTTP エージェント監視には Persistent connection (Keep Alive) の機能も追加されました。

「ブラウザ」アイテムタイプの追加

新しいアイテムタイプ (「ブラウザ」アイテム) が Zabbix に追加され、ブラウザを使用して複雑な Web サイトや Web アプリケーションを監視できるようになりました。「ブラウザ」アイテムを使用すると、ユーザー定義の JavaScript コードを実行して、クリック、テキストの入力、Web ページのナビゲーションなどのブラウザ関連のアクションをシミュレートできます。

このアイテムは、HTTP/HTTPS 経由でデータを収集し、Selenium Server またはプレーン WebDriver (ChromeDriver など) をテストエンドポイントとして W3C WebDriver 標準を部分的に実装します。

ブラウザ アイテムのサポートは現在実験段階であることに注意してください。

Zabbix プロキシの負荷分散と高可用性

Zabbix プロキシによる負荷分散と高可用性ができるようになりました。こちらは、Zabbix にプロキシグループを導入することで実装されます。プロキシグループは、プロキシ間のホストの自動分散や、プロキシ負荷の再分散、そして、高可用性を提供します。プロキシグループ内のあるプロキシがオフラインになると、オフラインとなったプロキシ配下にあるホストは、プロキシグループ内の他のプロキシに即座に分散されます。
詳細は、proxy load balancing and high availability をご参照ください。

Zabbix プロキシへのメモリバッファ機能の追加

Zabbix プロキシにメモリバッファが追加されました。これにより、監視値やネットワークディスカバリ、自動登録の結果をメモリに保存し、データベースにアクセスすることなく Zabbix サーバに送信することができるようになりました。

パフォーマンスを最適化するには、プロキシでメモリ バッファを使用するように構成することをお勧めします。これは、ProxyBufferMode の値を「disk」から「hybrid」(推奨) または「memory」に変更することで可能です。メモリ バッファ サイズ (ProxyMemoryBufferSize パラメータ) も設定する必要があります。

ProxyBufferMode メモリから送信 ディスクから送信 説明
hybrid モード
(推奨/初期値)
基本的にメモリバッファを利用してデータを保存するが、Zabbix プロキシが停止もしくはバッファが溢れたりデータがバッファの有効期限より古くなった場合は未送信のデータはデータベースに書き込まれる。すべてのデータが書き込まれるまでメモリバッファは利用されなくなる
本バージョンより推奨で、設定ファイルにデフォルトで記載されている
memory モード × データをメモリバッファのみに保存。データベースは利用しないため、 Zabbix プロキシの停止やバッファ溢れの場合は未送信のデータは失われる
disk モード
× メモリバッファを利用せず、常にデータベースへの保存、アクセスにより Zabbix サーバへデータを送信する
過去のバージョンのデフォルトモードであり、ProxyBufferMode の設定値がない場合にはこちらのモードとなる

ProxyMemoryBufferSize や ProxyMemoryBufferAge などの追加パラメータは、それぞれメモリ バッファ サイズとバッファ内のデータの最大経過時間を定義します。また、プロキシメモリバッファを監視するための新しいインターナルアイテムも追加されました。
詳細は、Zabbix proxy をご参照ください。

JIT(ジャストインタイム)ユーザープロビジョニング

LDAP/SAML の JIT プロビジョニングで認証時にユーザーを自動登録できるようになりました。その際、Zabbix でプロビジョニングされたユーザーには、以下のような柔軟性のある設定が提供されます。

  • ユーザーメディアの無効化/有効化
  • ユーザーメディア(例えば、「有効な時間帯」、「指定した深刻度のときに使用」、「有効」など)を手動で編集
  • ユーザーに手動で追加のユーザーメディアを追加

詳細は、Authentication をご参照ください。

アイテムのタイムアウト設定の強化

タイムアウトを設定可能なアイテムタイプが増え、かつ個々のアイテムレベルでタイムアウトを設定可能になりました。また、アイテムタイプ毎にグローバルおよび Zabbix プロキシレベルでのタイムアウト設定も可能です。タイムアウトの優先順位はアイテムレベルが最も高く、次にプロキシレベル、最後にグローバルレベルとなり、優先順位の高い設定で上書きされます。

Oracle DB の非推奨化

Zabbix DB として Oracle DB が非推奨となりました。将来的に Oracle DB に対するサポートは完全に削除されます。

Zabbix エージェントの通信プロトコルの改善

Zabbix エージェントがパッシブチェックに用いる JSON ベースのプロトコルが改善されました。以前のバージョンのエージェントとの互換性のために平文での通信プロトコルへの切り替え機能が追加され、エージェントから ZBX_NOTSUPPORTED が返された場合には平文のアイテムキーのみでリトライされます。また、zabbix_get コマンドにプロトコルを指定するための -P/--protocol オプションが追加されました。

  • auto: JSON プロトコルで接続し、失敗時には平文でリトライ
  • json: JSON プロトコルで接続
  • plaintext: 平文でアイテムキーのみを送信するプロトコルで接続

Zabbix agent/agent2プロトコルの統合

Zabbix agent を、Zabbix agent2 プロトコルに切り替えることで、Zabbix agent と Zabbix agent2 のプロトコルが統合されました。
Zabbix agent と Zabbix agent2 のリクエスト/レスポンスの違いは、variant の値(“1” – Zabbix agent, “2” – Zabbix agent 2)で区別されます。

詳細は、Passive and active agent checks をご参照ください。

アクティブチェックにおける例外設定/定期設定のサポート

アクティブチェックタイプのアイテムで監視間隔の例外設定/定期設定が、Zabbix agent/agent2 の両方でサポートされるようになりました。(以前は Zabbix agent2 のみ)

LLDで見つからなくなったリソースの自動無効機能

LLDで見つからなくなったリソースを自動的に無効化できるようになりました。見つからなくなったリソースは、即座に無効化したり、指定時間後に無効化したり、未監視とするなどの設定が可能です。

失われたリソース (ホスト、アイテム、トリガー) は、ステータス列に情報アイコンでマークされ、そのステータスが変化した理由などの詳細が表示されます。

スクリプト実行時におけるパラメータ値の手動入力機能

スクリプトの実行時にパラメータを手動で入力して実行できるようになりました。スクリプト内の {MANUALINPUT} マクロの箇所が、手動入力した値に置き換えられます。入力値は自由記述かドロップダウンを選択可能です。

Zabbix API を介した Zabbix サーバへの監視データ送信

従来の zabbix_sender コマンドに加えて、Zabbix API の history.push メソッドでも Zabbix サーバに監視データを送信できるようになりました。データを受信するには、従来通り Zabbix トラッパータイプもしくはトラッピングの有効化を設定した HTTP エージェントタイプのアイテムの設定が予め必要です。history.push によるデータ送信は監査ログに記録されます。また、ユーザーの役割設定における API メソッドの許可/拒否リストで history.push を設定可能です。
詳細は、history.push をご参照ください。

パフォーマンス

メンテナンス期間の更新反映の迅速化

メンテナンス対象の判定が既存の毎分 00 秒になった際に加えて、設定キャッシュの更新時にも実行されるようになりました。これによってメンテナンス期間の変更時にメンテナンスの開始および停止がより迅速に行われるようになります。メンテナンスの開始および停止の速度は設定キャッシュの更新間隔 (CacheUpdateFrequency の設定値) に依存します。また、既に開始されているメンテナンス設定に新たなホストもしくはホストグループが追加された場合、それらのホストに対するメンテナンスは既存の毎分 00 秒のチェックにより有効になります。

権限チェックの迅速化

非特権ユーザーに対する権限のチェックがより迅速に行われるようになりました。これにより、フロントエンドのホストや障害ページなどがより早く表示されるようになります。

トリガーアクション実行の高速化

トリガーアクションの実行内容、復旧時の実行内容、および更新時の実行内容の実行が、トリガーステータスの変更後、Zabbix サーバー上で即時実行 (100 ミリ秒未満) されるようになりました。(これまでは、最大 4 秒の遅延がありました)

遅延の短縮は、複数のプロセス (escalator と escalation initiator、escalator と alerter、preprocessing manager と history syncer) 間のプロセス間通信 (IPC) メカニズムを実装することで可能になりました。

ウィジェットの追加、更新

いくつかの新しいウィジェットが追加され、他のウィジェットの利用可能な機能も強化されました。さらに、ダッシュボードウィジェットは相互に接続して通信できるようになり、ウィジェットとダッシュボードがより動的になりました。

ゲージウィジェット

単一のアイテムの値をゲージで表示するウィジェットが追加されました。

円グラフウィジェット

選択した複数のアイテムの値を円グラフで表示するウィジェットが追加されました。表示形式は円グラフとドーナツグラフが選択可能です。また、凡例タブにアグリゲーション関数の表示オプションが追加されました。

ハニカムウィジェット

監視対象の監視値の動的で鮮明な概要をハニカムで表示するウィジェットが追加されました。

上位トリガーウィジェット

障害の多いトリガーを表示するウィジェットが追加されました。

アイテムのヒストリウィジェット

複数のアイテムタイプ (数値、文字、ログ、テキスト、バイナリ) のさまざまな表示オプションをサポートするウィジェットが追加されました。たとえば、進行状況バーやインジケーター、バイナリ データ型のイメージ (ブラウザアイテムに便利)、テキスト値の強調表示 (ログ ファイルの監視に便利) を表示できます。

詳細は、Item history をご参照ください。

ホストナビゲーターとアイテムナビゲーター

さまざまなフィルタリングおよびグループ化オプションに基づいて、それぞれホストまたはアイテムを表示し、選択したホストまたはアイテムに基づいて他のウィジェットに表示される情報を制御できるウィジェットが追加されました。

詳細は、Host navigator および Item navigator をご参照ください。

ウィジェット間のコミュニケーションフレームワーク

ダッシュボードウィジェットが相互に接続および通信できるようになりました。「ダイナミックアイテム」ウィジェットパラメータが「ホストを上書き」パラメータに置き換えられ、複数のウィジェットに「期間」パラメータが追加されました。これらのパラメータを使用して、ウィジェットを再設定することなく、1 つまたは複数のウィジェットに表示されるデータソースを制御できます。データソースは、同じダッシュボード内にある互換性のあるウィジェット単体、ダッシュボード自体、またはウィジェット自体 (期間の場合) のいずれかになります。

アイテムの値/上位ホストウィジェット

アイテムの値ウィジェットおよび上位ホストウィジェットで表示の対象となる期間を指定できるようになりました。また、アイテムの値ウィジェットでは、指定した期間でのアグリゲート(集計)値の表示機能も追加されました。表示できるアグリゲート(集計)値は以下の通りです。

  • 最小
  • 最大
  • 平均
  • カウント
  • 合計
  • 最初
  • 最新値

これらは最新値と平均値の比較やさまざまな期間での集計値の比較など、データ比較に活用できます。

テンプレートダッシュボードにおける利用可能ウィジェットの拡張

テンプレートダッシュボートですべてのウィジェットが利用可能になりました。

上位ホストウィジェットのソート機能の拡張

上位ホストウィジェットにおいて、アイテム値に加えてホスト名および文字列の行でもソート可能になりました。

ホスト稼働状況ウィジェットの機能拡張

ホスト稼働状況ウィジェットにおいて、アクティブチェックのインターフェースの状況を含めた稼働状況が表示可能になりました。また稼働状況に Mixed の項目が追加されました。少なくとも 1 つのインターフェースが利用不可、1 つのインターフェースが利用可能または不明である場合にこの項目に分類されます。さらに、インターフェイス別に分けずに、ホストの合計だけを表示することも可能です。

グラフウィジェットの凡例サイズの改善

グラフウィジェットにおいて、凡例のサイズが設定されたアイテム数に応じて変更されるようになりました。

関数

新しい関数

トリガー条件式および計算アイテムで以下の新しい関数が利用可能になりました。

  • jsonpath(): JSONPath の結果を返す
  • xmlxpath(): XML XPath の結果を返す

詳細は、String function をご参照ください。

更新された関数

  • アグリゲート関数が非数値に対応しました。
  • count および count_foreach アグリゲート関数に operator および pattern オプションが追加されました。これにより条件に一致した値のみをカウントすることが可能です
  • 全ての foreach 関数が count でサポートされていない項目をカウントに含めなくなりました
  • last_foreach 関数が period オプションをサポートするようになりました
  • 予測関数が返す値が double 型の範囲まで拡張されました。timeleft() 関数は 1.7976931348623158E+308 までの値を、forecast() 関数は-1.7976931348623158E+308 から 1.7976931348623158E+308 までの値を受け取ることができるようになりました

アイテム

デフォルトの履歴保存期間

アイテムのヒストリ保存期間のデフォルトが31日に統一されました。

数値 (整数) アイテムでの浮動小数値の対応

数値 (整数) 型のアイテムで浮動小数値を受け取った場合、小数点以下を切り捨て整数値として保存されるようになりました。

Windows イベントログでのログ数カウント

Zabbix agent/agent2 に eventlog.count アイテムが追加され、出力されたイベントログの数を取得できるようになりました。

単一 OID の SNMP リクエストの非同期化

非同期で単一 OID の値を取得する get[OID] の SNMP アイテムが追加されました。

追加されたインターナルアイテム

  • zabbix[proxy_buffer,buffer,]: メモリバッファの利用統計を返す
  • zabbix[proxy_buffer,state,changes]: 起動してからモードが disk/memory に変更された回数を返す
  • zabbix[proxy_buffer,state,current]: 新しいデータがディスク (データベース) とメモリのどちらに保存されるかを返す
  • zabbix[discovery_queue]: キューに溜まっているディスカバリチェックの数を返す
  • zabbix[vps,written]: データベースに書き込まれたヒストリ値の総数を返す

追加されたアイテム

  • net.dns.perf: net.dns アイテムの実行タイミングに合わせて、サービスから応答の待ち時間を秒数で返す
  • net.dns.get: DNS レコードの詳細な情報を返す (Zabbix エージェント 2 のみ)

更新されたアイテム

  • net.dns および net.dns.record: DNS の逆引きを実行する際に、逆引きおよび正引きでの DNS 名を許容するようになりました
  • system.sw.packages および system.sw.packages.get: Gentoo Linux をサポートするようになりました
  • system.hostname: type パラメータで fqdn が指定できるようになり、完全修飾ドメイン名を返すことが可能になりました
  • wmi.get および wmi.getall: Zabbix エージェント 2 においてブール値を表す文字列を含む JSON を返すようになりました
  • oracle.ts.discovery: コンテナ名を {#CON_NAME} LLD マクロで返すようになりました
  • oracle.ts.stats: 対象のコンテナ名を指定する conname パラメータが追加されました。また、返されるデータの JSON フォーマットが更新され、キーパラメータにテーブルスペース、タイプ、conname が指定されていない場合、返されるデータにはコンテナ名を含む追加の JSON レベルが含まれ、コンテナ間の区別が可能になります
  • vmware.eventlog: 深刻度によるフィルタオプションが追加されました
  • vmware.vm.discovery: 仮想マシンのネットワークインタフェースを返すようになりました。このデータはホストインタフェースのカスタマイズに利用可能です
  • vmware.vm.net.if.discovery: ネットワークインターフェースのアドレスの配列を返すようになりました
  • icmpping, icmppingloss および icmppingsec: リダイレクトを許容するかどうかを決めるための option パラメータが追加されました。リダイレクトのレスポンスがあった場合、このパラメータが空の場合はホストダウン、allow_redirect を指定するとホストアップとして扱われます

重複した SNMPv3 エンジン ID のロギング

SNMPv3 においてエンジン ID が重複した場合、Zabbix サーバのログに記録されるようになりました。ただしこの重複検知は各 snmp poller で個別に実行されることに注意してください。

標準アイテムに対するドキュメントへのリンクの追加

フロントエンドにおいて標準アイテムのドキュメントページへのリンクが追加されました。

保存前処理

利用不可アイテムに対するエラー処理の拡張

保存前処理の「サポートしていない値のチェック」が複数追加可能になり、正規表現で処理を振り分けられるようになりました。
詳細は、Check for not supported value をご参照ください。

一括更新時のユーザビリティ向上

保存前処理の一括更新に「置換」および「すべて削除」のラジオボタンが追加され、処理の内容がより分かりやすくなりました。

マクロ

アイテム名およびアイテムのプロトタイプ名におけるユーザーマクロのサポート

ユーザーマクロがアイテム名およびアイテムのプロトタイプ名でサポートされるようになりました。アイテムおよびアイテムのプロトタイプ名に対するユーザーマクロのサポートは Zabbix 6.0 で削除されましたが、再度サポートされるようになり、マクロ展開後のアイテム名での検索もサポートされます。

マクロ関数のサポート拡張

マクロ関数が全てのマクロタイプでサポートされるようになりました。

定期レポート

複数ページのレポート

複数ページのダッシュボードに対して、定期レポートにおいてその全てのページが出力されるようになりました。

通知

アクティブエージェントにおけるリモートコマンド

アクティブモードで動作するバージョン 7.0 の Zabbix エージェントで、リモートコマンドの実行が可能になりました。

インターナルイベントに対するタグのサポート

Webhook スクリプトにおける「タグとして処理」の設定がインターナルイベントでもサポートされるようになりました。{EVENT.TAGS.}{EVENT.TAGS}{EVENT.TAGSJSON}{EVENT.RECOVERY.TAGS}{EVENT.RECOVERY.TAGSJSON} のマクロもインターナルイベントの通知でサポートされます。

データベース

TimescaleDB における監査ログのハイパーテーブル化

TimescaleDB において auditlog テーブルがハイパーテーブルに変換されるようになりました。Zabbix 7.0 以前のバージョンからアップグレードする際には、Zabbix サーバの起動前に改めて timescaledb.sql を実行する必要があります。また、このスクリプトを実行せずに起動すると、ログに警告が出力されます。

Zabbix プロキシに対するテーブルの分割

Zabbix プロキシのレコードが hosts テーブルから分離され、proxy テーブルに保存されるようになりました。プロキシの運用データも host_rtdata テーブルから proxy_rtdata テーブルに移動されます。

プロセス

マルチスレッド化

マルチスレッド化への移行の一部として、プロセスにいくつかの変更点があります。

  • コンパイル時の configure オプションとして --with-stacksize オプションが追加されました。このオプションはデフォルトのシステムのスタックサイズを kB 単位で上書きします
  • ユーザーマクロの展開処理が preprocessing manager から preprocessing worker に移動されました

サーバ環境の制限の強化

デフォルトでグローバルスクリプトが実行禁止(EnableGlobalScripts=0)となっています。
また、フロントエンド構成ファイル(zabbix.conf.php)でユーザーのHTTP認証を無効($ALLOW_HTTP_AUTH=false)にできます。

設定ファイル検証オプションの追加

zabbix_serverzabbix_proxyzabbix_agentzabbix_agent2zabbix_web_service コマンドに設定ファイルに誤りがないかを検証するためのオプション -T/--test-config が追加されました。設定ファイルに誤りがない場合は終了コード 0、ある場合は 0 ではない終了コードと共に対応するエラーメッセージが出力されます。非推奨のパラメータが利用されているなどの警告がある場合でも、終了コードは 0 となります。

実行時の cURL ライブラリの検知

cURL ライブラリの検知が Zabbix サーバ、プロキシ、エージェントの再起動時に変更され、ライブラリのアップグレードにより再コンパイルが不要になりました。

Zabbix エージェント 2 の設定

  • BufferSize のデフォルト値が 100 から 1,000 に変更されました
  • プラグイン関連のパラメータ値で空値が許容されるようになりました

Windows の Zabbix エージェントサービスのスタートアップ設定

Windows の Zabbix エージェントサービスのスタートアップタイプを設定するオプション(-S –startup-type) が追加されました。
スタートアップの種類(自動、自動(遅延開始)、手動、無効)をコマンドラインオプションで指定できます。

旧型式の浮動小数点型のサポート終了

非推奨となっていた古いスタイルの浮動小数点型は、サポートされなくなりました。

サーバ、プロキシの設定ファイルに VaultPrefix パラメータが追加

zabbix_server.conf および zabbix_proxy.conf に、VaultPrefix パラメータが追加されました。zabbix.conf.php にオプションの $DB[‘VAULT_PREFIX’] が追加され、setup.php がそれに応じて更新されました。
そのため、Cyber​​Ark および HashiCorp の Vault パスは、非標準パスでの Vault 展開を可能にするためにハードコードされなくなりました。

ディスカバリ

ネットワークディスカバリの同時実行

ネットワークディスカバリがチェックのタイプ毎に並行して実行されるようになりました。StartDiscoverers のパラメータは discovery worker のプロセス数を設定するパラメータとなり、デフォルト値が 1 から 5 に、設定可能な最大値が 1,000 に変更されました。更に、ディスカバリルール毎に利用可能な worker 数を設定できるようになりました。

ディスカバリおよび自動登録時のホストタグの追加

ディスカバリおよび自動登録イベントの実行内容として、ホストタグの追加および削除が利用可能になりました。

ディスカバリによるホストグループの共有

ローレベルディスカバリにおいて、既に存在するホストグループにローレベルディスカバリによって生成されたホストを所属させることが可能になりました。

コネクタ

ストリーミングにおけるデータ選択と試行間隔の設定

アイテム値を Zabbix から外部のシステムにストリーミングする際に、コネクタがストリーミングするアイテム値をタイプ (数値(整数)、数値(浮動小数点)、文字列など) に基づいて設定できるようになりました。さらに、アイテム値やイベントのストリーミング時の試行間隔を設定できるようになりました。

Apache Kafka へのストリーミング

Apache Kafka へストリーミング可能なツールが追加されました。
詳細は、Kafka connector for Zabbix server をご参照ください。

テンプレート

新しいテンプレートと既存のテンプレートの変更があります。
詳細は、Template changes をご参照ください。

フロントエンド

多要素認証

多要素認証 (MFA) を使用して Zabbix にサインインできるようになりました。これにより、セキュリティがさらに強化されます。

  • TOTP (Time-Based One-Time Password) 認証
  • Duo ユニバーサルプロンプト認証

US 時間フォーマット

フロントエンドで en_US の言語設定をしている場合、日時も US 標準のフォーマットで表示されるようになりました。

複製の単純化

ホスト、テンプレートおよびマップの「複製」が削除され、「すべて複製」が「複製」に名称変更されました。機能は「すべて複製」と同等です。

アイコンのフォントへの変更

フロントエンドのアイコンが画像からフォントへ変更されました。

モーダルフォーム

フロントエンドのフォームの一部がモーダル (ポップアップ) ウィンドウで開くようになりました。

  • ネットワークディスカバリルール設定
  • グローバルスクリプト設定
  • イベント相関関係設定
  • モジュール設定
  • メディアタイプ設定
  • テンプレート設定
  • トリガーおよびトリガーのプロトタイプ設定
  • アイテムおよびアイテムのプロトタイプ設定

高度な設定の折り畳み

「高度な設定」の設定ブロックがチェックボックスから折り畳みによる展開形式に変更されました。

上位トリガーセクションの改善

「レポート」⇒「障害発生数上位100項目」のメニュー名が「上位の 100 トリガー」に変更されました。障害名とタグによるフィルタリングが追加され、ステータス変更数ではなく検出された障害数が表示されるようになりました。

設定フィールドに対する文字数制限の拡張

  • URL フィールドの文字数が 2048 文字に拡張されました
  • 認証フィールドのユーザー名およびパスワードの文字数が 255 文字に拡張されました

アイテム/保存前処理のテスト結果の切り捨て

アイテムをテストする場合、または、保存前処理をテストする場合、ホストから取得された値とテスト結果は、フロントエンドに送信されるときに最大サイズ 512 KB に切り捨てられるようになりました。

ホストダッシュボードタブ

ホストのダッシュボードのホスト選択がドロップダウンからページヘッダのタブに変更されました。

監査ログ

Zabbix サーバによって実行されるローレベルディスカバリ、ネットワークディスカバリおよび自動登録の監査ログの有効/無効を「管理」⇒「監査ログ」から設定可能になりました。

最新データのフィルター

「監視データ」⇒「最新データ」では、フィルターが設定されていない場合、サブフィルターとデータはデフォルトで表示されなくなりました。

最小要求 PHP バージョンの変更

要求される最小の PHP バージョンが 7.4.0 から 8.0.0 に変更されました。

要素名の変更

  • 一部のウィジェットの「タグ」ラベルがより明確な名称に変更されました
  • マップ一覧からマップの編集画面へのリンク名が「Constructor」から「Edit」に変更されました (日本語ではどちらも「変更」と表示されるため、変更はありません)
  • アイテムおよびアイテムのプロトタイプの設定画面におけるヒストリとトレンドの保存期間フィールドの名称が変更されました
  • 上位ホストウィジェットの「Order column (表示順序)」および「Host count (ホスト数)」フィールドが「Order by (※日本語未翻訳)」および「Host limit (ホスト数の上限)」に変更されました
  • グラフウィジェットの凡例の「Display min/max/avg (最小/最大/平均を表示)」フィールドが「Display min/avg/max (最小/平均/最大を表示)」に変更されました
  • ユーザープロファイルの「Messaging (アラート表示)」タブが「Frontend notifications (ポップアップ通知)」に変更されました

その他の変更

  • メインメニューのアイコンが更新されました
  • データがない、またはフィルターが設定されていないことを示すメッセージが更新されました
  • システム情報ページで Zabbix プロントエンドと Zabbix サーバのバージョンが表示されるようになりました
  • メディアタイプ一覧画面で利用されるアクションがすべて表示されるようになりました
  • 最新データ画面で状態(すべて/ノーマル/取得不可)フィルタが追加されました
  • 障害画面で確認状態 (すべて/未確認状態/確認済/私が確認) フィルタが追加されました
  • マップ要素および図形の設定と一括更新のポップアップウィンドウに標準のウィンドウクローズボタンが追加されました
  • ユーザーグループの権限およびタグフィルタの設定が改善され、一度に複数のホストやテンプレートグループを同じ権限で設定できるようになりました
  • 1 つのブラウザでグローバル通知をスヌーズすると、ユーザーがログインしているすべてのブラウザ/デバイスでスヌーズされるようになりました
  • アイテムの値ウィジェットの「ホストを上書き」パラメータが高度な設定の前に移動しました

プラグイン

Ember+

Zabbix エージェント 2 による Ember+ の直接監視用の新しいプラグインが追加されました。
詳細は、Ember+ plugin readme をご参照ください。

インストール

RHEL 系 OS に対するインストールパッケージの分離

AlmaLinux、CentOS Stream、Oracle Linux、Rocky Linux のバージョン 8 と 9 には、専用のインストールパッケージが提供されるようになりました。

ARM64/AArch64 のサポート

SLES/OpenSUSE Leap 15 と同様に、Debian, RHEL 8, 9 およびその派生 OS でも ARM64/AArch64 用のパッケージが提供されるようになりました。