Zabbix 6.4 の紹介

本記事では、Zabbix 6.4.0 で追加された機能や変更点について解説します。

Zabbix 6.4 の変更点は Zabbix 公式サイトの以下のページに記載されています。

Zabbix 6.0、6.2 の変更点の詳細については以下の記事を参照ください。

Zabbix 6.4 の主な機能追加・変更点を以下に挙げます。

ユーザビリティの向上

障害の原因と副次的な障害の表示

発生した複数の障害を、主要な障害原因とそれから副次的に発生したものとへ分類して表示することができる機能が追加されました。

例えば、Web サーバにおいて「Ping の疎通不可」と「Web サイトへのアクセス不可」の 2 つの障害が発生した場合、前者を主要な障害原因、後者を副次的に発生した障害とみなすことができます。

障害を分類することにより障害間の関連性を明確にし、障害対応の優先順位付けや対応可否の判断に役立てることができます。

障害の分類は「監視データ」→「障害」ページで行います。

デフォルトではすべての新しい障害イベントは、主要な障害原因に分類されています。

発生したイベントを副次的な障害としたい場合は、まず該当する障害イベントにチェックを入れた後、主要な障害原因としたい障害イベントの障害名をクリックします。

次に表示されたコンテキストメニューから「選択したものを副次的な障害として追加」を選択することで、チェックを入れた障害イベントを副次的な障害として分類し、主要な障害原因と関連付けることができます。

副次的な障害イベントは主要な障害原因となる障害イベントの下にグループ化され、それに応じてアイコン、小さいフォント、異なる背景で表示されます。

また、原因となる障害イベントには関連付けられた副次的な障害イベントの数が表示されます。

副次的な障害へ分類したイベントは、同じくコンテキストメニューの「副次的な障害から削除」を選択することで、主要な障害原因に分類し直すことも可能です。

また、通知メッセージに {EVENT.CAUSE.*} および {EVENT.SYMPTOMS} マクロを利用することで、副次的な障害を関連付けた主要な障害原因イベントと主要な障害原因に関連付けられた副次的な障害イベントのリストをそれぞれ参照できるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Cause and symptom problems

外部システムへのデータストリーミング

Zabbix で収集したアイテム値やイベントデータを HTTP 経由で Kafka や RabbitMQ、Amazon Kinesis などの外部システムに NDJSON 形式でストリーミングできる機能が、実験的にではありますが実装されました。

タグフィルタを使用することでストリーミングの対象とするデータを選別することも可能です。

この機能を検証するためのレシーバが Zabbix から提供されています。

Zabbix Tools/Receiver

外部システムへのデータストリーミングを設定するためには、以下の手順が必要です。

  1. Zabbix からデータを受信するためのリモートシステムを設定。
  2. Zabbix で必要な数のコネクタワーカーを設定し(zabbix_server.conf の StartConnectors を設定)、Zabbix サーバを再起動。
  3. 「管理」→「一般設定」→「コネクタ」で 新しいコネクタを設定し、レシーバの URL とその他のパラメータを設定。

コネクタの設定が完了すると、Zabbix はデータレシーバへのデータ送信を開始します。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Streaming to external systems

なお、本機能に伴い、Zabbix サーバに 2 つの新しいプロセス、connector managerconnector worker が追加されました。

また、Zabbix インターナルアイテム zabbix[connector_queue] でコネクタキューにエンキューされた値のカウントを監視することができます。

LDAP/SAML ユーザープロビジョニング

LDAP/SAML ユーザーの JIT (ジャストインタイム) ユーザープロビジョニングを設定することができるようになりました。

LDAP/SAML を利用してはじめて Zabbix にログインする際にそのユーザーのアカウントを自動で作成することができます。

また、ユーザーの自動作成と更新に加えて、LDAP/SAML と Zabbix の間でユーザーグループやユーザーメディアの紐づけをすることができます。

プロビジョニングされたユーザーはユーザーリストで新しい「プロビジョニング済」カラムに日付が表示されます。

また、LDAP から作成されたユーザーを更新するためにユーザーリストに「プロビジョニングの実行」オプションが追加されました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

メディアタイプ設定の簡略化

Gmail/Office365 メディアタイプのプロセス自動化

メールメディアタイプの設定に新しく追加された電子メールプロバイダフィールドでは、Gmail と Office365 用にあらかじめ設定されたオプションを選択できます。

Gmail/Office365 関連のオプションを選択する場合、送信者メールアドレス/パスワードを入力するだけで動作するメディアタイプを作成することができます。

メールアドレス/パスワードが入力されると、Zabbix は Gmail/Office365 メディアタイプに必要なすべての設定(SMTP サーバ、SMTP サーバポート、SMTP helo、接続セキュリティなど)を実際の値/推奨値で自動的に入力します。この自動化によりこれらのフィールドは表示されませんが、メディアタイプのリストで SMTP サーバと電子メールの詳細を確認することが可能です。

また、以下の点に注意が必要です。

  • リレーオプションの場合パスワードは必要ありません。
  • Office365 リレーの場合提供された電子メールアドレスのドメイン名は SMTP サーバを動的に埋めるために使用されます (例: example-com.mail.protection.outlook.com の “example.com” を実際の値で置き換えられます)。
  • SMTP helo の値は提供された電子メールアドレスから抽出されたドメイン名となります。
  • 通常の SMTP サーバを利用する場合は Generic SMTP 設定を利用できます。

その他の変更点

  • 」フィールドは、「メール」と記載されるようになりました。
  • SMTP helo フィールドがオプションになりました (空の場合、送信元メールアドレスのドメイン部分が送信されます)。
  • デフォルトのメディアタイプが新規追加されました。
    • Gmail
    • Gmail relay
    • Office365
    • Office365 relay
  • 新規インストールではすべてのメディアタイプがデフォルトで無効状態となります。
  • ユーザーメディアで、特定の受信者アドレスが指定されている場合、有効なメディアタイプのみを選択できるようになりました。
  • ユーザーメディアで、メディアタイプが無効化されていることを示す黄色いアイコンとステータスカラムが表示されるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

インターフェース不要な監視アイテム

以下のタイプのアイテムを設定する際に、ホストのインターフェース設定が不要になりました。

  • シンプルチェック
  • 外部チェック
  • SSH エージェント
  • TELNET エージェント

また、それらのアイテムを作成する際「ホストインターフェース」フィールドで「なし」を選択できるようになりました。

「ホストインターフェース」フィールドに「なし」を選択する場合はアイテムキーに IP アドレスもしくは DNS 名を指定する必要があります。

指定していない状態でもアイテムの登録は可能ですが、そのアイテムでの監視は失敗し、「取得不可」となるため注意が必要です。

アクティブチェックの即時更新

Zabbix エージェントは、Zabbix サーバまたは Zabbix プロキシからアクティブチェックのための設定を同期する際に、ホストやグローバル正規表現の設定に変更がない限り、設定全体ではなく変更点のみを同期するようになりました。

それに伴い、Zabbix エージェントの設定ファイルにおける設定同期の周期を設定するパラメータ RefreshActiveChecks のデフォルト値が 120 (秒) から 5 (秒) に変更されました。

また、アクティブチェックの JSON プロトコルが更新され、config_revision と session ID が追加されました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Passive and active agent checks

バリューキャッシュの最適化

バリューキャッシュ内のアイテム値は、毎日更新されない場合削除されていましたが、現在はアイテムが削除されるか、アイテムの値がトリガー条件式、計算アイテム式で指定された時間またはカウントの範囲外になるまで保持されるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Value cache

Zabbix プロキシに関する追加機能・仕様変更

プロキシ設定の更新最適化

Zabbix プロキシに対して設定を同期する際に、設定全体ではなく変更部分のみを同期するようになりました。

変更の有無はリビジョン番号を使用して追跡され、プロキシ設定リビジョンよりも大きなリビジョンを持つエンティティのみが同期されるようになります。

これにより変更がない場合は何も同期されないため、リソースを節約しプロキシ設定の更新間隔をより短く(ほとんど瞬間的に)設定することができるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Synchronization of monitoring configuration

設定パラメータ

Zabbix プロキシへの設定同期の周期を設定するパラメータが ProxyConfigFrequency に統一され、デフォルト値が 10 (秒) に変更されました。

Zabbix 6.2 までとの変更点は以下の表を参照してください。

プロキシ
モード
設定ファイル Zabbix 6.2 まで Zabbix 6.4
パラメータ デフォルト値 パラメータ デフォルト値
パッシブ zabbix_server.conf ProxyConfigFrequency 3600 ProxyConfigFrequency 10
アクティブ zabbix_proxy.conf ConfigFrequency 3600 ProxyConfigFrequency 10

アクティブモードでの ConfigFrequency パラメータは非推奨となり、ProxyConfigFrequency と同時に使用された場合、Zabbix プロキシ はエラーを記録して終了します。

また、zabbix_server.conf の CacheUpdateFrequency パラメータのデフォルト値も 10 (秒) に変更されました。

Zabbix サーバ に対する Zabbix プロキシのバージョン互換性向上

Zabbix サーバより古いメジャーバージョンの Zabbix プロキシに対してもデータ収集とリモートコマンド実行が可能になりました。

これにより、Zabbix サーバと Zabbix プロキシのバージョンアップを同時に行う必要がなくなり、その際に発生する監視のダウンタイムやデータの損失を最小限に抑えることが可能です。

注意点として、これの互換性は全ての機能に対応しているわけではなく、古い Zabbix プロキシに対しては監視設定の更新などは行われないため、そのままバージョンの異なる Zabbix プロキシを利用し続けることは推奨されません。

また、サポートするバージョンはひとつ前の LTS バージョンまでとなり、Zabbix サーバが 6.4 の場合 Zabbix プロキシ 6.0、6.2、6.4 をサポートします。

それ以前のプロキシはサポートされておらず、Zabbix サーバとの通信はすべて警告が表示され失敗します。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Upgrade procedure

Zabbix プロキシからハートビートを削除

Zabbix プロキシの内部プロセスから heartbeat sender が削除されました。

これにより Zabbix プロキシアイテムの zabbix [process,heartbeat sender] はサポートされなくなり、テンプレートから削除されました。

また、Zabbix プロキシの設定ファイル zabbix_proxy.conf 内の HeartbeatFrequency パラメータは非推奨となりました。

SQLite データベースの自動的再作成

SQLite3 を使用している Zabbix プロキシのアップグレード後の初回起動時に既存の古いバージョンのデータベースファイルを自動的にダンプし、現在のバージョンのデータベースファイルを新規に作成するように変更されました。

なお、SQLite データベースファイルに保存されているヒストリデータが削除されるため注意が必要です。

フロントエンド

新しいメニューレイアウト

Zabbix 6.4 でメニューレイアウトが刷新されトップレベルメニューに以下のメニューが追加されています。

  • ダッシュボード
    • 「監視データ」のサブメニューからトップレベルメニューに変更されました。
  • 通知
    • アクション、メディアタイプ、スクリプトなどのアラート関連のサブメニューが含まれます。
    • アクションにはすべての種類のアクションを含むサブメニューが追加されました。
  • ユーザー
    • ユーザーグループ、ユーザーロール、ユーザー、API トークン、認証など、ユーザー管理に関するサブメニューが含まれます。
  • データ収集
    • 名称が「設定」から変更され、データ収集の設定に関連するサブメニューが含まれます。

レイアウトについては以下の変更も行われています。

  • レポートメニュー下の「監査」が「監査ログ」に名称が変更されました。
  • 「監査ログ」、「データの保存期間」、「マクロ」が「管理」→「一般設定」配下から「管理」直下のサブメニューになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Frontend sections

コンテキストメニュー

ホスト、アイテム、イベントのコンテキストメニューがより機能的になりました。

ホストコンテキストメニュー

ホスト、アイテム、トリガー、ディスカバリルール、Web シナリオの設定ページへのリンクとなるメニューが追加され、必要なエンティティの設定に素早くアクセスできるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Host context menu

アイテムコンテキストメニュー

アイテムに基づくトリガー一覧およびトリガー、ディスカバリルール、依存アイテム作成画面へのリンクとなるメニューが追加されました。

また、そのアイテムとアイテムが設定されているホストでフィルタリングされた「最新データ」ページへのリンクとなるメニューが追加されました。

アイテムコンテキストメニューは以下のメニューで利用可能です。

  • 「データ収集」→「ホスト」→「アイテム」
  • 「データ収集」→「ホスト」→「ディスカバリルール」→「アイテムのプロトタイプ」

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Item context menu

イベントコンテキストメニュー

以下のメニューが追加されました。

  • 「障害」 – 障害の確認および対応状況を更新することができる
  • 「アイテム」 – トリガー条件式に使用されている各アイテムの設定画面へのリンク
  • 「副次的な障害から削除」、「選択したものを副次的な障害として追加」 – 特定の障害を主要な障害原因か副次的な障害か分類することができる

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Event context menu

いずれのコンテキストメニューにおいても設定セクションへのリンクは十分な権限を持つ管理者および特権管理者のユーザーでしか表示されません。

カスタムリンク

「通知」→「スクリプト」に「URL」タイプのグローバルスクリプトが新たに追加され、ホストコンテキストメニューとイベントコンテキストメニューにカスタムリンクとして追加できるようになりました。

設定されたリンクは該当するホストや障害イベントのコンテキストメニューに表示されます。

ホストグループやユーザーグループの指定ができるためリンクを表示させる範囲を絞り込むことも可能です。

この画像の場合、「Linux servers」ホストグループに所属するホストのコンテキストメニューにリンクが表示されるようになります。

トリガー URL のカスタムラベル

トリガーを設定する際にトリガー URL にカスタムラベルを追加可能になりました。

設定された URL ラベルはメニュー項目名としてイベントコンテキストメニューで URL の代わりに表示されます。

また、マクロ {TRRIGGER.URL.NAME} が追加され、メニュー項目名を表示することが可能です。

{TRRIGGER.URL.NAME} はマクロ {TRIGGER.URL} で現在サポートされているすべての場所でサポートされています。

「アイテムの値」ウィジェットの背景色

「アイテムの値」ウィジェットで設定した閾値による動的な背景色の設定が可能になりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Item Value

グラフウィジェットのユーザビリティ向上

グラフウィジェットを作成する際にデータセットのラベルを自由に変更できるようになりました。

これにより、ウィジェット上でデータセットを識別しやすくなり、グラフの凡例での集約されたデータセットの識別性も向上しました。

また、以下の機能も改善されています。

  • ウィジェットのオートコンプリート機能
  • ホストパターンにおいて選択されたホストに属するアイテムのみをアイテムパターンで候補として表示

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

graph widgets

上位ホストウィジェットのアイテム値の小数点以下の桁数

「上位ホスト」ウィジェットで表示するアイテムの値の小数点以下の桁数を指定できるようになりました。

ダイナミックアイテムフィールドの名称変更

「アイテムの値」ウィジェットにおいてダイナミックウィジェットを有効にするフィールドは「ダイナミックアイテム」から「ホスト選択を有効」に名称が変更されました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

dynamic widgets

イベント一覧ページの「確認済み」列の名称変更

「確認済み」列は「更新」列に名称が変更されました。

これに伴い、各イベントの「いいえ/はい」の表示も「更新」に変更されています。

障害が確認された場合、アクション列に緑のチェックアイコンが表示されるようになりました。

ステータスによるホストフィルタリング

「データ収集」→「ホスト」セクションで表示されるホストをステータス(有効/無効)でフィルタリングすることが可能になりました。

その他

  • アクション設定、メンテナンス期間設定およびホストやテンプレート間でアイテム、トリガー、グラフをコピーするフォームがモーダル(ポップアップ)ウィンドウで開かれるようになりました。
  • カタロニア語をフロントエンドで利用できるようになりました。

セキュリティ

安全なパスワード変更

ユーザープロファイルまたはユーザー設定から自身のユーザーパスワードを変更する際に、現在のパスワードの入力が必須になりました。

パスワードの変更に成功するとユーザーはすべてのアクティブなセッションからログアウトされます。

なお、パスワードの変更は Zabbix の内部認証を使用しているユーザーのみ可能です。

CSRF トークン

CSRF (クロスサイトリクエストフォージェリ) 攻撃に対するセキュリティ強化のため、Zabbix フロントエンドでは静的なセッションベースのトークンの代わりにランダムに生成される CSRF トークンが使用されるようになりました。

テンプレート

テンプレートのバージョン管理

テンプレートの管理およびアップグレードを改善するために、テンプレートのバージョン管理が導入されました。

「データ収集」→「テンプレート」でテンプレートのベンダーとバージョンを確認できるようになり、ベンダーやバージョンでテンプレートをフィルタリングできるようになりました。

なお、旧バージョンから 6.4 にアップグレードした場合はテンプレートのバージョン表示はされません。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Upgrade notes for 6.4.0

テンプレート更新

以下のテンプレートが更新されました。

  •  ファイルシステムディスカバリに関するテンプレート – vfs.fs.discovery アイテムの代わりに vfs.fs.get アイテムを使用するように更新され、いくつかの追加変更がありました。
    • ディスカバリの更新間隔が 1 分に短縮されました。
    • アイテムのプロトタイプは vfs.fs.get マスターアイテムに依存するようになりました。
    • 読み取り専用モードで再マウントされたボリュームを検出するトリガーが UNIX テンプレートに追加されました。
    • それぞれのテンプレートで Linux のバインドマウントと macOS の .dmg ボリュームをフィルタリングするフィルタが追加されました。
  • Linux by Zabbix agent – system.sw.packages アイテムから system.sw.packages.get アイテムへの変更およびそれに伴うトリガーの追加がされました。
  • Windows by Zabbix agent および Windows by Zabbix agent active – system.sw.os アイテムおよびそれに伴うトリガーの追加がされました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Template changes

これらのテンプレートは以下の手順で入手できます。

  • Zabbix 6.4 を新規インストールする場合は「データ収集」→「テンプレート」でこれらのテンプレートが存在していることを確認できます。
  • 旧バージョンからアップグレードする場合は Zabbix Gitリポジトリの Zabbix/templates から新しいテンプレートをダウンロードし「データ収集」→「テンプレート」で手動でインポートすることができます。

テンプレートとホストのインポート

テンプレート/ホストの設定インポートフォームのルールセクションに「All」行が追加されました。

「All」行にチェックを入れると、インポート可能なすべてのエンティティがマークされ、チェックしない場合はすべてのエンティティがマークされていない状態になります。

インポートルールのエンティティの全リストを表示するには、「高度なオプション」にチェックを入れます。

また、「存在しない場合に削除」オプションがデフォルトでチェックされるようになりました。

MySQL サポートバージョン

MySQL のバージョンの最小要件が 8.0.30 に変更されました。

libssh サポートバージョン

libssh バージョンの最小要件が 0.6.0 から 0.9.0 に変更されました。

SLES サポートバージョン

SUSE Linux Enterprise Server (SLES) 15 でサポートされるサービスパックのバージョンの最小要件が SP4 となりました。

SP4 以降の SLES 12 も引き続きサポートされていますが、libssh ライブラリが古いため、この OS バージョンでの SSH チェックのサポートは終了しています。

Zabbix 内部プロセスのプロファイリング

Zabbix サーバおよび Zabbix プロキシのランタイムコマンドに内部プロセスのプロファイリング用のオプションが追加されました。

zabbix_server -R prof_enable(プロファイリングの有効化)
zabbix_server -R prof_disable(プロファイリングの無効化)

プロファイリングを有効にすると、関数名ごとにすべての rwlock/mutex の詳細が表示されます。

rwlock/mutex の詳細は zabbix_server.log または zabbix_proxy.log に出力されます。

また、以下のようにプロセス名を指定して、特定のプロセスだけ有効/無効にすることも可能です。

zabbix_server -R prof_enable='history syncer'

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

ファイルシステムディスカバリに関する追加・変更点

vfs.fs.get および vfs.fs.discovery アイテムキーはそれぞれ “options” と “{#FSOPTIONS}” プロパティ(ファイルシステムのマウントオプション)も返すようになりました。

このオプションにより VM などの読み取り専用として再マウントされたファイルシステムを検出したり、バインドマウントや macOS 上の .dmg ボリュームをフィルタリングしたりすることができます。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Discovery of mounted filesystems

また、ファイルシステムのディスカバリを行うテンプレートでは vfs.fs.discovery ではなく vfs.fs.get キーが使用されるようになりました。

この変更に伴い、以下の変更も行われています。

  • ディスカバリの更新間隔が 1 分に短縮されました。
  • アイテムのプロトタイプは vfs.fs.get の依存アイテムに変更されました。
  • 読み取り専用モードで再マウントされたボリュームを検出するトリガーが UNIX テンプレートに追加されました。
  • それぞれのテンプレートに Linux のバインドマウントと macOS の .dmg ボリュームをフィルタリングするためのフィルターが追加されました。

ディスカバリとデータ収集

SNMP の検出とデータ収集の最適化

SNMP のディスカバリとデータ収集において、SNMP バージョン v2 および v3 ではネイティブの SNMP バルクリクエスト(GetBulkRequest-PDU)が使用されるように更新されました。

SNMP の GetBulk リクエストは複数の GetNext リクエストを実行し、その結果を 1 つのレスポンスとして返します。

以前は、Zabbix の SNMP エージェントの discovery[] アイテムのみが GetBulk リクエストを使用し、通常の SNMP アイテムでは使用できず、ディスカバリされた SNMP アイテムは個別にデバイスに問い合わせをする必要がありました。

新しい SNMP walk[OID1,OID2,…] アイテムを使用すると、デバイスへの追加リクエストなしに 1 回のリクエストでデータを収集し、必要に応じてレスポンスをパースすることが可能になります。

walk[] アイテムはインターフェース名と型の複数行リストを返します。

.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.1 = OID: .1.3.6.1.6.3.10.3.1.1
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.2 = OID: .1.3.6.1.6.3.11.3.1.1
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.3 = OID: .1.3.6.1.6.3.15.2.1.1
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.4 = OID: .1.3.6.1.6.3.1
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.5 = OID: .1.3.6.1.6.3.16.2.2.1
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.6 = OID: .1.3.6.1.2.1.49
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.7 = OID: .1.3.6.1.2.1.4
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.8 = OID: .1.3.6.1.2.1.50
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.9 = OID: .1.3.6.1.6.3.13.3.1.3
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.2.10 = OID: .1.3.6.1.2.1.92
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.1 = STRING: The SNMP Management Architecture MIB.
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.2 = STRING: The MIB for Message Processing and Dispatching.
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.3 = STRING: The management information definitions for the SNMP User-based Security Model.
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.4 = STRING: The MIB module for SNMPv2 entities
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.5 = STRING: View-based Access Control Model for SNMP.
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.6 = STRING: The MIB module for managing TCP implementations
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.7 = STRING: The MIB module for managing IP and ICMP implementations
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.8 = STRING: The MIB module for managing UDP implementations
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.9 = STRING: The MIB modules for managing SNMP Notification, plus filtering.
.1.3.6.1.2.1.1.9.1.3.10 = STRING: The MIB module for logging SNMP Notifications.

Zabbix の保存前処理オプションを使用すると、アイテムのレスポンスを使用してインターフェースをディスカバリしてアイテムを作成、その値を入力することができます。

この場合のディスカバリルールは walk[] を利用したマスターアイテムに依存するディスカバリルールでなければならず、アイテムプロトタイプは walk[] を利用したマスターアイテムの依存アイテムである必要があります。

この機能のために、2 つの新しい保存前処理ステップが追加されました。

  • SNMP walk の値  – 指定された OID/MIB 名で SNMP walk の値を抽出し、フォーマットします。
  • SNMP walk から JSON – SNMP walk の値を JSON に変換します。

walk[] アイテムは、-Oe -Ot -On オプションを指定した snmpwalk コマンドの出力を返します。

MIB 名はパラメータとしてサポートされているため、walk[1.3.6.1.2.1.2] と walk[ifDescr] は同じ出力を返します。

複数の OID/MIB が指定された場合(例:walk[ifDescr,ifType,ifPhysAddress])、出力は連結されたリストとなります。

このアイテムは、SNMPv2 および v3 インタフェースでは GetBulk リクエストを、SNMPv1 インタフェースでは GetNext を使用します。GetBulk リクエストの最大繰り返し回数は、SNMP インタフェースの「最大繰り返し回数」で設定されます。

SNMP インターフェースで以前の「bulkリクエストを使用」オプションの名称は Zabbix 6.4 では「組み合わせたリクエストの使用」に変更されています。

これはネイティブの SNMP バルクリクエストとは一切関係なく、複数の SNMP リクエストを結合する Zabbix 独自の方法です。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

ホストメタデータの上限値

ホスト自動登録で使用される Zabbix エージェントの設定ファイル zabbix_agentd.conf 内の HostMetadataItem パラメータは最大 65535 UTF-8 コードポイントまで返せるようになりました(以前のバージョンでは 255)。

なお、それ以上の値は切り捨てられます。

MySQL では、返される値にマルチバイト文字が含まれる場合、有効な最大文字数が少なくなることに注意してください。例えば、3 バイト文字のみを含む値は合計で 21844 文字に制限され、4 バイト文字のみを含む値は 16383 文字に制限されます。

また、同じく zabbix_agentd.conf の HostMetadata パラメータの最大長は 2034 バイトに増加されました。

アクションログ

新しいフィルタリングオプション

「レポート」→「アクションログ」セクションに新しいフィルタリングオプションが追加されました。

  • アクション名
  • メディアタイプ
  • アクションのステータス
  • 文字列検索

これらのフィルタリングオプションはアクションログウィジェットにも設定することができます。

CSV 形式へのデータエクスポート

アクションログの記録を CSV ファイルに書き出すことができるようになりました。

詳細は以下の公式ドキュメントを参照してください。

Action log