
本記事では、2024/12/10 にリリースされた Zabbix 7.2.0 で追加された機能や変更点について解説します。
Zabbix 7.2の変更点は Zabbix 公式サイトの以下のページに記載されています。
Zababix 7.0 の変更点の詳細については以下の記事を参照ください。
Zabbix 7.2 の主な機能追加・変更点を以下に挙げます。
環境変数を使用した設定ファイルの管理
Zabbix コンポーネントでは、環境変数を使用して設定を行うことが可能になりました。
設定ファイルに値をハードコーディングする必要がなくなり、
特にDocker のような動的な環境で、実行時に変数を渡して異なるセットアップに
柔軟に対応できるようになります。
環境変数をサポートするZabbix コンポーネントは以下の通りです:
- Server
- Proxy
- Agent(UNIXおよびWindows)
- Agent 2(UNIXおよびWindows、pluginsを含む)
- Webサービス
- Zabbix sender(-c 、–config オプション使用時)
環境変数Linux の設定例
1.設定ファイルで環境変数を使用
例として、/etc/zabbix/zabbix_agentd.conf に以下のように記述します。
Hostname=${ZBX_HOSTNAME} ServerActive=${ServerActive}
2.環境変数を設定し、構成のテストを行います。
ZBX_HOSTNAME="Linux-Agent" ServerActive="127.0.0.1" /usr/sbin/zabbix_agentd -c /etc/zabbix/zabbix_agentd.conf --test-config
3.Zabbix Agent の起動
環境変数を使用してエージェントを起動します。
ZBX_HOSTNAME="New Zabbix agent" ServerActive=127.0.0.1 /usr/sbin/zabbix_agentd -c /etc/zabbix/zabbix_agentd.conf
環境変数Windows の設定例
設定ファイルで環境変数を使用
例として、C:\zabbix\zabbix_agentd.conf に以下のように記述します。
Hostname=${ZBX_HOSTNAME} ServerActive=${ServerActive}
2.環境変数を設定し、構成のテストを行います。
set ZBX_HOSTNAME=Windows-Agent set ServerActive=<サーバーのIP> "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.exe" -c "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.conf" --test-config
3.Zabbix Agent の起動
環境変数を使用してエージェントを起動します。
set ZBX_HOSTNAME=Windows-Agent set ServerActive=<サーバーのIP> "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.exe" -c "C:\Program Files\Zabbix Agent\zabbix_agentd.conf"
※Windows の相違点
Windows では環境変数名が大文字小文字を区別しないため、
ZBX_HOSTNAME とzbx_hostname は同じ変数として扱われます。
環境変数の構成方法、構文、例、制約については、環境変数の詳細をご参照ください。
より効率的なlow-level discovery
low-level discovery プロセスのパフォーマンスが大幅に向上し、
エンティティの検出、更新、削除が迅速になりました。
この改善により、従来設定されていた制限が撤廃され、
依存アイテムやアイテム依存レベルの数に制限なく設定できるようになりました。
ウィジェットの改善
ホストカード
「ホストカード」ウィジェットが追加されました。
単一のホストに関する詳細な情報を一目で確認することができます。
ホストカードの設定値
パラメーター | 説明 |
---|---|
ホスト | ホストを選択します。あるいは、互換性のあるウィジェットまたは ダッシュボードをデータソースとして選択します。 名前を入力し始めると一致する候補が表示されます。 また、選択ボタンを押して手動で選択することもできます。 このパラメーターは、テンプレートダッシュボードで ウィジェットを設定する場合は使用できません。 |
抑制された問題を表示 | このチェックボックスをマークすると、 抑制された問題を問題計算に含めることができます。 |
表示 | ウィジェットに表示する最大8つのセクションを設定できます。 セクションはドラッグ&ドロップで並べ替えることができます。
|
インベントリフィールド | 表示するインベントリフィールドを指定します。 名前を入力し始めると一致する候補が表示されます。 また、選択ボタンを押して手動で選択することもできます。 インベントリフィールドを指定しない場合、 すべての入力済みインベントリフィールドが表示されます。 このパラメーターは、インベントリが表示セクションで 選択されている場合にのみ利用可能です。 |
トップアイテム
「トップアイテム」ウィジェットが追加され、
廃止された「データ概要」ウィジェットの機能を置き換えました。
トップアイテムでは、アイテムは直接選択するか、またはパターンで選択することが可能で、
列の並び順やハイライトをカスタマイズすることもできます。
問題のあるアイテムの色は、問題の深刻度に基づいており、この色は問題更新画面で調整可能です。
デフォルトでは、直近24時間以内の値のみが表示されます。
この制限は、大量の最新データページの初期読み込み時間を改善する目的で導入されました。
制限は、「管理」→「一般設定」→「GUI」にある「最大履歴表示期間」オプションで設定可能です。
より詳細な設定はトップアイテムを参照してください。
スパークラインチャート
「アイテム値」ウィジェットでスパークラインチャート
(コンパクトな折れ線グラフ)がサポートされるようになり、値の変化を簡単に把握できます。
トップホストウィジェットの列
「トップホスト」ウィジェットでアイテム値の列設定がさらに多様化しました。
- 数値型アイテム値をスパークラインチャートとして表示可能
- バイナリ型アイテム値で、サムネイルやフルサイズ画像へのリンクを表示可能
- テキスト型アイテム値で、正規表現に一致する場合に列の背景色を変更可能
グラフウィジェットの強化
「グラフ」ウィジェットに以下の2つの新機能が追加されました
- Y軸の対数スケーリングをサポート
- 「ホストを上書き」設定でダッシュボードや互換性のあるウィジェットから動的にホストを選択可能
時計ウィジェットの動的なユニットサイズ
「時計」ウィジェットで、表示される情報(日時、タイムゾーンなど)
のサイズがウィジェットサイズやスケーリングに応じて動的に調整されるようになりました。
この変更に伴い、手動でユニットサイズを設定するパラメータは削除されました。
アイテムの新機能
- vmware.vm.hv.maintenance[]:VMware 仮想マシンのハイパーバイザメンテナンス
ステータスを監視できるようになりました。 - ssh.run[]:SSH のPubkeyAcceptedKeyTypes オプション及び新しいパラメータ
(SFTP やNETCONF などのSSHサブシステムの使用)が追加されました。 - systemd.unit.discovery[]:サービスユニットの動作を示す{#UNIT.SERVICETYPE}の
マクロを監視できるようになりました。 - system.cpu.util[]:OpenBSD で新しいタイプのスピンをサーポトするようになりました。
マクロの新機能
新しいマクロ
- {TIMESTAMP}、{EVENT.TIMESTAMP}などの{TIMESTAMP}が現在時刻を
Unix タイムスタンプ形式で解決できるようになりました。 - {EVENT.UPDATE.ACTIONJSON}:問題更新時の実行されたアクションの
詳細を含むJSON 配列に返すようになりました。 - {SERVICE.ID}:アクションを実行したサービスのID を返すようになりました。
更新されたマクロ
- {HOST.PORT}:従来の{HOST.CONN}と同じ場所でサポート(例外あり)
- {FUNCTION.VALUE<1-9>}などがトリガー式の値参照をサポート
詳細はマクロのサポートをご確認ください。
モーダルフォームへの直接リンク
ホスト、アイテム、トリガーなどのモーダルフォームを開くと、
独自のリンクが作成され、問題に関連する通知メッセージに直接リンクしたり、
リンクを共有したりすることができます。
たとえば、アイテムのモーダル フォーム リンクは次のようになります:
/zabbix.php?action=popup&popup=item.edit&context=host&itemid=42243
また、新しいタブで任意のモーダルフォームを開くことができるようになりました。
新しいタブで開くと、フォームは灰色の背景で開きます。
リポジトリ構造の変更
公式Zabbix リポジトリでは、未リリースのバージョンのパッケージが
.../7.2/unstable フォルダで利用可能になり
安定版パッケージは…/7.2/stable フォルダに、カスタマイズパッケージは
.../7.2/release フォルダに格納されています。
また、バージョン7.2以降、non-supported フォルダはthird-party に名称変更され、
RHEL およびその派生ディストリビューション向けに特化したパッケージが含まれています。