速報:PGConf.EU 参加レポート (Day 2)

PGConf.EU(PostgreSQL Conference Europe)は、欧州最大級のPostgreSQLコミュニティカンファレンスです。
PostgreSQLの開発者やユーザー、ベンダー企業が世界中から集まり、最新機能や開発動向、運用事例、技術的な知見を共有します。PostgreSQLコミュニティを代表する国際イベントの一つとして知られており、毎年多くの参加者が集まります。

2026年は10月20日から23日にかけてスペイン・バレンシアで開催されます。

本レポートでは、PGConf.EU 2026 Day2で発表された講演のうち、筆者が印象に残ったセッションを紹介します。

Autovacuum Is Running. Is It Actually Working?

Teresa Lopes 氏は、PostgreSQL の autovacuum が適切に動作しているかを確認する方法と、効果的なチューニングについて解説しました。

PostgreSQL の MVCC の仕組みでは更新前の行がテーブルに残るため、不要になった行(dead tuple)を VACUUM で回収する必要があります。autovacuum はこの処理を自動化しますが、デフォルト設定が必ずしも最適とは限りません。
講演では、autovacuum の起動条件を決めるしきい値とスケールファクターの影響を実験で比較しました。小規模テーブルではautovacuum_vacuum_threshold、大規模テーブルではautovacuum_vacuum_scale_factorの調整が重要です。また、コスト上限やコスト遅延、ワーカー数を調整することで、システム負荷と処理時間のバランスを改善できることを示しました。

一方、長時間トランザクションや放置されたレプリケーションスロットなどが VACUUM の処理を妨げる場合があります。さらに、通常の VACUUM ではテーブルやインデックスの肥大化を完全には解消できず、REPACK や REINDEX などが必要になることも説明しました。

最後に、PostgreSQL 19 に向けた改善にも触れ、autovacuumが適切に動作しているかを監視可能になる機能改善が多数あることが紹介されました。
PostgreSQLを運用する上でautovacuumは重要な役割を果たしていますが、適切に動作させることは難しい印象です。弊社のサポートでもautovacuumについての問い合わせは数多くあります。講演者がautovacuumのチューニングに対する苦労を語っていた点に共感しました。

 

How to Contribute to the PostgreSQL Documentation

David E. Wheeler 氏は、PostgreSQL の公式ドキュメントを改善し、コミュニティに貢献する方法を紹介しました。

PostgreSQL のドキュメントは XMLベースのマークアップ言語である DocBook で管理されており、Emacs や Vim などのテキストエディタで編集できます。章や段落、リンク、表、コマンドの実行例などは専用のタグで記述されます。修正後は make check で構文を検証し、HTML や PDF を生成して内容を確認できます。
変更を提出する際は、git diff で差分を確認し、git format-patch でパッチを作成します。PostgreSQL では GitHub の Pull Request ではなく、メーリングリストにパッチを投稿する方法が基本です。投稿後は CommitFest に登録することで、レビュー状況を追跡できます。
講演者は、機能の開発者でなくても、利用者として疑問に感じた点や分かりにくい説明を改善することで、PostgreSQL の発展に貢献できると強調しました。

講演内では、ドキュメントを改善してコミュニティにパッチを投稿するまでの一連の流れが紹介されており、この講演を聞けば今にでもパッチ投稿できそうなところが良かったです。また、PostgreSQLのドキュメント内で使用されている DocBook のタグについても丁寧な解説があり、非常に参考になりました。

 

Security Strategies for your database backups

データベース本体ではロールや権限、パスワード、SSL/TLS などのセキュリティ対策が重視されますが、バックアップについては取得や復元の成否、処理時間に注目が集まり、セキュリティ対策が後回しになりがちです。

バックアップの保管先が適切に保護されていないと、攻撃者に機密データを読み取られたり、バックアップファイルを改ざんされたりする可能性があります。改ざんされたバックアップを使用すると、不正なデータや設定が復元先に持ち込まれ、復旧後のシステムに新たな問題が発生する恐れもあります。また、ランサムウェア攻撃では、データベース本体だけでなくバックアップも標的となり、復旧手段を奪われる可能性があります。そのため、バックアップをデータベース本体と同じ権限やネットワークの中だけで管理することには注意が必要です。

バックアップの保管方法として、元データを含めて 3 つのコピーを保持し、2 種類の異なる媒体に保存し、少なくとも 1 つのコピーをオフサイトに保管する「3-2-1 戦略」が紹介されました。さらに、定期的な復元テストを実施し、バックアップから正常にデータベースを復旧できることを確認することも重要です。

セキュリティ対策としては、バックアップの暗号化とアクセス制御が挙げられました。クラウドストレージでは、KMS(Key Management Service)を利用した暗号鍵の管理に加え、ストレージへのアクセス制御やパブリックアクセスの制限が有効です。また、VPC やプライベートエンドポイントなどを活用したネットワーク経由のアクセス制限や、転送時の暗号化によって、バックアップへの不正アクセスや情報漏えいのリスクを低減できます。

近年、個人情報の流出事故が相次いでおり、データベースのセキュリティ対策はますます重要になっています。今回の講演を通じて、データベース本体だけでなく、バックアップの保管方法や暗号化、アクセス制御まで含めて適切に設計することの重要性を改めて感じました。

 

まとめ

以上、PGConf.EU 2 日目の講演レポートでした。
PostgreSQL本体の開発に参加するための方法や、開発を行ってみての知見を発表するセッションが複数あることが、本イベントの特色のうちの1つであると感じます。PostgreSQL開発コミュニティへ貢献することへの関心の高さを感じました。

 

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