PostgreSQL 13 に関する技術情報

このページでは PostgreSQL 13(2020/9/24リリース) に関する技術情報をお届けします。
本ドキュメントは PostgreSQL のリリースノートを元に弊社で解説を加えたものです。
バージョン13の新機能については「PostgreSQL 13 検証報告」も参照してください。

バージョン13の主要な拡張

PostgreSQL 13 の主な拡張点は以下の通りです。

  • B-treeインデックスの重複排除による性能改善と省スペース化
  • 集約やパーティションテーブルを使った問い合わせの性能改善
  • 拡張統計情報を用いたプラン作成の改善
  • インデックスの並列VACUUM
  • インクリメンタルソート

バージョン13への移行/互換性のない変更点

  1. SIMILAR TO ... ESCAPE NULL が必ず NULL を返すようになりました。 (Tom Lane) (13)
  2. この新しい動作は標準 SQL 規格に沿っています。以前は、SIMILAR TO ... ESCAPE NULL とした場合に、デフォルトのエスケープ文字列(バックスラッシュ文字)が使用されていました。 この変更は substring(text FROM pattern ESCAPE text) にも適用されます。

    SIMILAR TO ... ESCAPE NULL に対応した関数は similar_escape() から、新たに追加された similar_to_escape() に変更されます。互換性のため従来動作をする similar_escape() 関数自体はそのまま残されます。

    「col1 SIMILAR TO '%pattern%' ESCAPE NULL」は、12以前なら「col1 ~ similar_escape('%pattern%'::text, NULL::text)」、13以降なら「col1 ~ similar_to_escape('%pattern%'::text, NULL::text)」と書き換えできて、ビュー定義の中では後者の関数を使った形式で保存されるため、古いビューは以前の動作が維持された状態となります。

  3. json(b)_to_tsvector 関数で filter に指定した string に対して、完全にスペルチェックされるようになりました。 (Dominik Czarnota) (13)
  4. effective_io_concurrency に基づく並列リクエスト数の計算方法が変更されました。 (Thomas Munro) (13)
  5. デフォルト値以外(すなわち 2以上)が設定されている場合に影響があります。

    以前は、この effective_io_concurrency を基に調整された値が、ビットマップヒープスキャン時の並列リクエスト数として使用されていました。これからは、effective_io_concurrency が、そのまま並列リクエスト数として使用されます。以前の値から新しい値への変換は、次の SQL を使用して求めることができます。

     SELECT round(sum(OLDVALUE / n::float)) AS newvalue FROM generate_series(1, OLDVALUE) s(n);
    
  6. pg_stat_ssl および pg_stat_gssapi システムビューで補助プロセスが表示されなくなりました。 (Euler Taveira) (13)
  7. 補助プロセスとは autovacuum launcher や walwriter、checkpointer といった、クライアント接続には対応するものではないプロセスのことです。

    一貫性を向上させるように、待機イベントの名前が変更されました。待機イベントは pg_stat_activity ビューの wait_event に現れます。

  8. ALTER FOREIGN TABLE ... RENAME COLUMN がより適切なコマンドタグを返すようになりました。 (Fujii Masao) (13)
  9. 以前は ALTER TABLE が返されていました。これからは ALTER FOREIGN TABLE を返されます。

  10. MATERIALIZED VIEW ... RENAME COLUMN がより適切なコマンドタグを返すようになりました。 (Fujii Masao) (13)
  11. 以前は ALTER TABLE が返されていました。これからは ALTER MATERIALIZED VIEW を返されます。

  12. wal_keep_segments パラメータの名前が wal_keep_size に変更されました。 (Fujii Masao) (13)
  13. このパラメータにより、スタンバイサーバー用に保持する WAL セグメントファイルの量が決まります。wal_keep_segments のようにファイル数ではなく、メガバイト単位で指定されます。次の式で、以前の wal_keep_segments から、ほぼ同等の wal_keep_size に設定する値を算出できます。

     wal_keep_size = wal_keep_segments * wal_segment_size (通常 16MB)
    
  14. PostgreSQL 8.0 より前の構文を使用して演算子クラスを定義できなくなりました。 (Daniel Gustafsson) (13)
  15. PostgreSQL 7.3 より前の構文を使用して外部キー制約を定義できなくなりました。 (Daniel Gustafsson) (13)
  16. PostgreSQL 7.3 より前に使われていた opaque型がサポートされなくなりました。 (Daniel Gustafsson) (13)
  17. パッケージ化されていない(9.1より前の)拡張機能のアップグレードがサポートされなくなりました。 (Tom Lane) (13)
  18. CREATE EXTENSION の FROM オプションはサポートされなくなりました。 パッケージ化されていない拡張機能をまだ使用している場合は、PostgreSQL13 に更新する前にパッケージ化されたバージョンにアップグレードする必要があります。

  19. timezone データベース内の posixrules ファイルがサポートされなくなりました。 (Tom Lane) (13)
  20. IANA のタイムゾーングループはこの機能を廃止しました。そのため、今後、数年間でシステムのタイムゾーンデータベースから徐々に消えていくと予想されます。タイムゾーンデータの更新で予期しない動作の変更を防止するため、PostgreSQL 13 で本機能はサポートされなくなりました。これは、明示的なサマータイムルールがない POSIX スタイルのタイムゾーン仕様の動作にのみ影響します。 以前は、独自の posixrules ファイルを導入することで変換規則を決定できましたが、これからは固定の動作となります。

    影響を受けるインストレーションに対する推奨される修正方法は、地理的なタイムゾーン名を使用することです。

  21. ltreeモジュールで、lqueryパターンに中括弧付きの隣接するアスタリスクが含まれている場合(例:*{2}.*{3})、それを適切に *{5} として解釈するようになりました。 (Nikita Glukhov) (13)
  22. (従来の不適切な動作例、13.0 からは後者も t になる)
    db=# SELECT ltree 'a.b' ~ '*{2}';
     ?column?
    ----------
     t
    (1 row)
    
    db=# SELECT ltree 'a.b' ~ '*{1}.*{1}';
     ?column?
    ----------
     f
    (1 row)
    
  23. pageinspectモジュールの bt_metap関数が、オーバーフローする可能性が低い、より適切なデータ型を返すようになりました。 (Peter Geoghegan) (13)
  24. 戻り値に含まれるいくつかの項目でデータ型が int型から bigint型、real型からdouble precision型に変更されています。

変更点

サーバ

パーティショニング
  • パーティションの除外処理(プルーニング)がより多くのケースで可能となりました。 (Yuzuko Hosoya, Amit Langote, Álvaro Herrera) (13)
  • パーティション毎の結合がより多くのケースで可能となりました。 (Ashutosh Bapat, Etsuro Fujita, Amit Langote, Tom Lane) (13)
  • たとえば、パーティション境界が正確には一致しない場合でも、パーティションテーブル間のパーティション毎の結合を行えるようになりました。

  • パーティションテーブルで行レベルの BEFOREトリガーがサポートされました。 (Álvaro Herrera) (13)
  • ただし、この BEFOREトリガーでは、データを書き込む宛先のパーティションを変更することはできません。

  • パーティションテーブルに対して、ロジカルレプリケーションを構成することが可能となりました。 (Amit Langote) (13)
  • 以前は、パーティションテーブルに属するパーティションごとにレプリケーションを設定する必要がありました。 変更後は、パーティションテーブルを明示的に発行(パブリッシュ)できるようになり、そのパーティションテーブルに属するすべてのパーティションが自動的に発行されるようになりました。パーティションテーブルにパーティションが追加または削除されると、発行者(パブリッシャー)にも連動して追加または削除されます。

    CREATE PUBLICATION オプションの publish_via_partition_root は、パーティションへの変更を、独自の変更として発行するか、親となるパーティションテーブルの変更として発行するかを制御します。

  • 購読者(サブスクライバー)が、パーティションテーブルに対して購読(サブスクライブ)できるようになりました。 (Amit Langote) (13)
  • 以前は、購読者はパーティション化されていないテーブルへの行しか購読できませんでした。

  • 行全体の変数(table.*)がパーティション式で使用できるようになりました。 (Amit Langote) (13)
  • (例:以下が実行可能になります)
    db=# CREATE TABLE pt6 (a int, b int) PARTITION BY LIST ((pt6));
    db=# CREATE TABLE pt6_p1 PARTITION OF pt6 FOR VALUES IN ('(1,2)');
    db=# CREATE TABLE pt6_p2 PARTITION OF pt6 FOR VALUES IN ('(2,4)');
    
インデックス
  • B-Treeインデックスにキー値が格納されるときに、重複が排除されるようになりました。 (Anastasia Lubennikova, Peter Geoghegan) (13)
  • これにより、重複したキー値は 1つだけ保存されることになり、カーディナリティの低い(値の種類が少ない)列に対しても効率的な B-Treeインデックスを作成できるようになりました pg_upgrade を利用してアップグレードした場合には、REINDEX を使用して、既存のインデックスから重複を排除する必要があります。

  • box型に対して定義された GiST および SP-GiSTインデックスが ORDER BY box <-> point を含んだ問い合わせに対応しました。 (Nikita Glukhov) (13)
  • GIN インデックスが !(否定) を含んだ tsquery 検索を、より効率的に処理できるようなりました。 (Nikita Glukhov, Alexander Korotkov, Tom Lane, Julien Rouhaud) (13)
  • インデックスの演算子クラスがパラメータを受け取れるようになりました。 (Nikita Glukhov) (13)
  • これによりインデックス作成時に演算子クラスと共にパラメータも指定するという使い方が実現できました。次項目も参照してください。

  • CREATE INDEXで GiSTシグネチャの長さと整数範囲の最大数を指定できるようになりました。 (Nikita Glukhov) (13)
  • 4バイトおよび 8バイトの intarray、tsvector、pgtrgm、ltree、および hstoreデータ型で作成されたインデックスは、デフォルト値を使用するのではなく、これらのGiSTインデックスのパラメータを使用して制御できるようになりました。

    (例: hstore の gistインデックスにシグネチャ長を指定)
    db=# CREATE INDEX hidx ON t11 USING gist (h gist_hstore_ops(siglen=2024));
    
  • デフォルト以外の照合順序を使用するインデックスを、テーブルのユニークキー制約または主キー制約に変更できないようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • ユニークキー制約または主キー制約に該当するインデックスの照合順序は基になる列の照合順序と一致する必要がありますが、これまでは ALTER TABLE ではこのチェックが漏れていました。

オプティマイザ
  • 包含/一致の演算子に対するオプティマイザの選択性推定が改善されました。 (Tom Lane) (13)
  • jsonb型に対する @> 演算子などが該当します。

  • 拡張統計オブジェクトに対して統計対象を設定できるようになりました。 (Tomas Vondra) (13)
  • 新しいコマンドオプション ALTER STATISTICS ... SET STATISTICS で設定できます。以前は、より一般的な統計対象の設定(default_statistics_target や各列の指定 )に基づいて計算されていました。

  • 1つのクエリで複数の拡張統計オブジェクトを使用できるようになりました。 (Tomas Vondra) (13)
  • OR句および IN / ANY 定数リストに対して拡張統計オブジェクトを使用できるようになりました。 (Pierre Ducroquet, Tomas Vondra) (13)
  • FROM句の中で使用される関数が定数として評価される場合、それらがインライン化できるようになりました。 (Alexander Kuzmenkov, Aleksandr Parfenov) (13)
  • 以下のような形状の問い合わせで、IMMUTABLEな関数の繰り返し実行やテーブル結合を省略することができます。

    db=# explain (costs off)
          SELECT * FROM t17, to_tsquery('english', 'abc') q WHERE tsv @@ q;
    
    (インライン化された実行プラン)
                  QUERY PLAN
    ---------------------------------------
     Seq Scan on t17
       Filter: (tsv @@ '''abc'''::tsquery)
    (2 行)
    
    (従来の実行プラン)
                 QUERY PLAN
    -------------------------------------
     Nested Loop
       Join Filter: (t17.tsv @@ q.q)
       ->  Function Scan on to_tsquery q
       ->  Seq Scan on t17
    (4 行)
    
性能一般
  • インクリメンタルソートが実装されました。 (James Coleman, Alexander Korotkov, Tomas Vondra) (13)
  • クエリの部分結果が、1つ以上のソートキーで既にソートされている場合、残りのソートキーのみを考慮して追加のソートを実行できます。必要に応じて enable_incremental_sort を変更することで制御できます。

  • inet型の値に対するソート処理のパフォーマンスが向上しました。 (Brandur Leach) (13)
  • 大規模な集約結果セットむけに、ディスクストレージを使用したハッシュ集約が可能になりました。 (Jeff Davis) (13)
  • 以前は work_mem メモリ以上の集約結果セットとなることが予想される場合、ハッシュ集約は行われませんでした。ハッシュテーブルのサイズが work_mem に hash_mem_multiplierをかけた値を超えると、ディスクストレージが使用されるようになります。

    この動作は、ハッシュ集約が選択されるとハッシュテーブルがどんなに大きくても(プランナーが誤って推定した場合は非常に大きくなる可能性があります)、それをメモリ内に保持しようとする以前の振る舞いよりも、望ましいと考えられます。

    必要に応じて hash_mem_multiplier 設定値を増やすことで、以前と同様の挙動とすることができます。

  • UPDATE および DELETE だけでなく、INSERT でも自動VACUUM が行えるようになりました。 (Laurenz Albe, Darafei Praliaskouski) (13)
  • 以前は、挿入のみの処理では削除するデッドタプルが存在しないという理由で、自動ANALYZE は行われましたが、自動VACUUM は行われませんでした。しかしながら、VACUUM 処理には、可視性マップのビットの設定など、他の有用な副作用があり、INDEX ONLY SCAN の効率が向上します。また、INSERT 専用テーブルに定期的な VACUUM をかけることで、古いタプルに対する凍結処理を分散させることができるため、テーブル全体が XID周回防止のしきい値に達した際に突然発生する、大量の凍結処理を行う必要がなくなります。

    この動作は、新規追加パラメータ autovacuum_vacuum_insert_threshold および autovacuum_vacuum_insert_scale_factor、または同様の制御を行うテーブルの格納オプションで調整できます。

  • maintenance_io_concurrency パラメーターが追加され、メンテナンス操作の I/O同時実行性を制御できるようになりました。 (Thomas Munro) (13)
  • wal_level が minimal の場合、リレーションを作成または書き換えるトランザクションで必ずしも WAL を作成しなくなりました。 (Kyotaro Horiguchi) (13)
  • wal_skip_threshold より大きいサイズのリレーションは、WAL を生成するのではなく、fsync を実行します。以前は、この動作は COPY操作に対してのみ実行されていましたが、クラッシュリカバリ中にデータ損失を引き起こす可能性のあるバグがありました。

  • 多くのテーブル空間が使用されているときに実行した DROP DATABASEコマンドの WALリプレイの性能が向上しました。 (Fujii Masao) (13)
  • 巨大なリレーションに対する TRUNCATEコマンドの性能が向上しました。 (Kirk Jamison) (13)
  • TOASTされたデータに対する先行バイトの取得処理が改善しました。 (Binguo Bao, Andrey Borodin) (13)
  • 以前は一部の先行バイトのみが必要であることがわかっている場合でも、圧縮された行外TOASTデータを全て取得していました。これからは結果を生成するのに十分なデータのみが取得されるようになります。

  • LISTEN/NOTIFY コマンドの性能が向上しました。 (Martijn van Oosterhout, Tom Lane) (13)
  • 整数型からテキスト型への変換処理が高速化しました。 (David Fetter) (13)
  • 多くの SQL文を含む、問い合わせ文字列や拡張スクリプトを実行した際のメモリ使用量が削減されました。 (Amit Langote) (13)
モニタリング
  • EXPLAIN、auto_explain、自動VACUUM および pg_stat_statements でWAL使用の統計を追跡するようになりました。 (Kirill Bychik, Julien Rouhaud) (13)
  • EXPLAIN のオプションに「WAL」が加わり、auto_explain に auto_explain.log_wal 設定が加わりました。自動VACUUM のログメッセージに「WAL usage:」が報告されます。pg_stat_statements に wal_bytes、wal_records および wal_num_fpw 列が加わりました。

  • すべてのSQL文ではなく、SQL文をサンプリングしてログに記録できるようになりました。 (Adrien Nayrat) (13)
  • 実行時間が log_min_duration_sample を超えるSQL文の対象の中からlog_statement_sample_rate の割合でログに記録されます。

  • csvlog の出力にバックエンド種別の列が追加され、log_line_prefix にバックエンド種別を出力させる %b オプションが追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • プリペアドステートメントのパラメータロギングの制御が改善されました。 (Alexey Bashtanov, Álvaro Herrera) (13)
  • 設定 log_parameter_max_length でエラー以外のステートメントのログ記録中に出力されるパラメータ値の最大長を制御し、エラーのあるステートメントのログ記録ではlog_parameter_max_length_on_error が同じことを行います。以前は、エラー時にはプリペアドステートメントのパラメータはログ記録されませんでした。

  • エラー後に関数呼び出しのバックトレースが記録できるようになりました。 (Peter Eisentraut, Álvaro Herrera) (13)
  • backtrace_functions 設定に、エラー時にバックトレースを生成する C関数名を指定します。

  • オーバーフローしないように VACUUM バッファカウンタを64ビット幅にしました。 (Álvaro Herrera) (13)
システムビュー
  • pg_stat_activity ビューにパラレルワーカーのリーダープロセスを報告する leader_pid列が追加されました。 (Julien Rouhaud) (13)
  • ストリーミングベースのバックアップの進捗状況を報告するpg_stat_progress_basebackup システムビューが追加されました。 (Fujii Masao) (13)
  • ANALYZE の進捗状況を報告する pg_stat_progress_analyze システムビューが追加されました。 (Álvaro Herrera, Tatsuro Yamada, Vinayak Pokale) (13)
  • 共有メモリの使用状況を表示する pg_shmem_allocations システムビューが追加されました。 (Andres Freund, Robert Haas) (13)
  • 内部 SLRUキャッシュを監視する pg_stat_slru システムビューが追加されました。 (Tomas Vondra) (13)
  • track_activity_query_size が最大 1MB まで設定できるようになりました。 (Vyacheslav Makarov) (13)
  • 以前の最大値は 100kB でした。

待機イベント
  • posix_fallocate() を使った DSM セグメントの作成中に待機イベントが報告されるようになりました。 (Thomas Munro) (13)
  • コストベースのバキューム遅延を報告する待機イベント VacuumDelay が追加されました。 (Justin Pryzby) (13)
  • WALアーカイブとリカバリ一時停止の待機イベント、BackupWaitWalArchive と RecoveryPause が追加されました。 (Fujii Masao) (13)
  • リカバリコンフリクトを監視するための待機イベントとして RecoveryConflictSnapshot と RecoveryConflictTablespace が追加されました。 (Masahiko Sawada) (13)
  • BSDベースのシステムでの待機イベントの性能が改善されました。 (Thomas Munro) (13)
認証
  • スーパーユーザにのみ ssl_passphrase_command 設定の表示が許可されるようになりました。 (Insung Moon) (13)
  • これはセキュリティ上の予防措置として変更されました。

  • 暗号化された接続で使用するサーバのデフォルト最小 TLS バージョンが1.0 から 1.2 に変更されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • この選択は ssl_min_protocol_version 設定パラメータで制御できます。

サーバ設定
  • 読み取り専用のトランザクションモードでユーティリティコマンドを許可するルールが厳格化されました。 (Robert Haas) (13)
  • また、副次的な効果として、パラレルクエリで実行できるユーティリティコマンドの数が増えました。ALTER SYSTEM、CALL、DO、CHECKPOINT、COPY FROM、EXPLAIN、および SHOWが実行可能になっています。

  • システムテーブルの変更を許可する allow_system_table_mods 設定が、サーバ再起動なしに変更できるようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • allow_system_table_mods が設定されている場合、スーパーユーザ以外のユーザがシステムテーブルを変更できないようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • 以前は、サーバ起動時に allow_system_table_mods が設定されているとスーパーユーザ以外のユーザであってもシステムテーブルに対してINSERT/UPDATE/DELETE コマンドを発行することができました。

  • Windows で Unixドメインソケットがサポートされるようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)

ストリーミングレプリケーションとリカバリ

  • ストリーミングレプリケーションの設定がリロードで変更できるようになりました。 (Sergei Kornilov) (13)
  • 以前は、primary_conninfo と primary_slot_name 設定を変更するにはサーバ再起動が必要でした。

  • 永続的なレプリケーションスロットが指定されていない場合に、WALレシーバーが一時的なレプリケーションスロットを使用できるようになりました。 (Peter Eisentraut, Sergei Kornilov) (13)
  • この動作は wal_receiver_create_temp_slot 設定パラメータを使用して有効に出来ます。

  • レプリケーションスロットの WAL格納が max_slot_wal_keep_size で制限できるようになりました。 (Kyotaro Horiguchi) (13)
  • この値を超える必要があるレプリケーションスロットは無効と印付けされます。

  • スタンバイの昇格が、要求された一時停止をキャンセルできるようになりました。 (Fujii Masao) (13)
  • 以前は、スタンバイは一時停止状態のときには昇格できませんでした。

  • リカバリが指定されたリカバリ目標に到達しなかった場合、エラーが生成されるようになりました。 (Leif Gunnar Erlandsen, Peter Eisentraut) (13)
  • 以前は、スタンバイは目標に到達していなくても、WAL の終わりに達すると自分自身を昇格していました。

  • ディスクにあふれだす前にロジカルデコーディングで使用されるメモリ量が制御できるようになりました。 (Tomas Vondra, Dilip Kumar, Amit Kapila) (13)
  • これは logical_decoding_work_mem 設定で制御できます。

  • 無効なページが WAL によって参照されている場合でもリカバリが継続できるようになりました。 (Fujii Masao) (13)
  • これは ignore_invalid_pages 設定パラメータで有効にできます。

ユーティリティコマンド

  • VACUUM がテーブルのインデックスを並行して処理できるようになりました。 (Masahiko Sawada, Amit Kapila) (13)
  • 新たに加わった PARALLEL オプションで制御できます。

  • FETCH FIRST を WITH TIES と共に使用することで、最後の結果行にマッチする追加の行を返すことが可能になりました。 (Surafel Temesgen) (13)
  • EXPLAIN コマンドの BUFFER オプション出力で、プラン作成時のバッファ使用量が報告されるようになりました。 (Julien Rouhaud) (13)
  • CREATE TABLE LIKE で作成したテーブルに「CHECK」制約の「NO INHERIT」属性が伝播するようになりました。 (Ildar Musin, Chris Travers) (13)
  • パーティションテーブルで LOCK TABLE を使用する場合に、子テーブルの権限を無視するようになりました。 (Amit Langote) (13)
  • これまで継承(INHERITS)によるパーティションテーブルでは、親テーブルを通したアクセスでも子テーブルに対する権限も検査されていました。

  • IDENTITY列への挿入で OVERRIDING USER VALUE句が利用可能になりました。 (Dean Rasheed) (13)
  • 列から GENERATED属性を削除する ALTER TABLE ... DROP EXPRESSION 構文が追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • 複数ステップの ALTER TABLE コマンドのバグが修正されました。 (Tom Lane) (13)
  • IF NOT EXISTS句は、列がすでに存在する場合に派生アクション(インデックス作成など)が実行されないという点で、期待通りに動作するようになりました。

    また、以前は動作しなかった関連するアクションを 1つの ALTER TABLE に連結する特定の場合でも動作するようになりました。

    (例:12.x 以前では以下の ALTER TABLE はエラーになる)
    db=# CREATE TABLE t67 (f1 int);
    db=# ALTER TABLE t67 ADD COLUMN f2 int NOT NULL,
           ALTER COLUMN f2 ADD GENERATED ALWAYS AS IDENTITY,
           ALTER COLUMN f2 SET GENERATED BY DEFAULT SET INCREMENT 10;
    
  • ALTER VIEW にビューの列の名前を変更する構文が追加されました。 (Fujii Masao) (13)
  • ビューの列の名前を変更することはすでに可能でしたが、ALTER TABLE RENAME COLUMN と書く必要がありました。これは混乱を招きました。

  • ALTER TYPE に基本型の TOAST属性とサポート関数を変更するオプションが追加されました。 (Tomas Vondra, Tom Lane) (13)
  • CREATE DATABASE コマンドに LOCALE オプションが追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • これは、既存のオプション LC_COLLATE と LC_CTYPE が 1つのオプションにまとまったものです。

  • DROP DATABASE で、対象データベースを使用中のセッションがある時でも削除できるように、セッション切断が可能になりました。 (Pavel Stehule, Amit Kapila) (13)
  • この動作は FORCE オプションで有効になります。

  • TriggerData構造体に tg_updatedcolsメンバが追加されて、C言語の更新トリガが更新された列を認識できるようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)

データ型

  • 互換性のある引数を必要とする関数での使用のために、多様データ型がいくつか追加されました。 (Pavel Stehule) (13)
  • 新たなデータ型は、anycompatible、anycompatiblearray、anycompatiblenonarray、および、anycompatiblerange です。

  • FullTransactionId 変数を見せる SQLデータ型 xid8 が追加されました。 (Thomas Munro) (13)
  • 既存の xidデータ型は 4バイトしか無いため、トランザクションエポックを提供できません。FullTransactionId 変数は PostgreSQL実装コード内で使われている 8バイトの変数です。なお、各行のメタ情報として格納されるトランザクションID は依然 4バイトです。

  • 照合順序オブジェクトの OID を人間が読める表現に変換するのに利用できる、データ型 regcollation と関連する関数が追加されました。 (Julien Rouhaud) (13)
  • (使用例)
    db=# SELECT 12770::regcollation;
     regcollation
    --------------
     "ja_JP.utf8"
    (1 row)
    
  • 一部の場合に照合順序のバージョン識別子として glibcバージョンを使うようになりました。 (Thomas Munro) (13)
  • 照合順序のベンダが libc であって glibc が使われている場合が対象です。これにより、glibcバージョンが変更された場合に、照合順序に依存するインデックスの破損が起こりうることについて警告が出るようになります。

  • Windows で照合順序のバージョンに対応しました。 (Thomas Munro) (13)
  • ROW式で要素を後置記法で抽出できるようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • ROW式による行コンストラクタの要素には、f1、f2、f3…という列名が自動で付与されます。以下に例を示します。

    db=# SELECT (ROW(4, 5.0)).f1 ;
     f1
    ----
      4
    (1 row)
    
    db=# SELECT (ROW(123, 'AA'::text, 5.43::real)).*;
     f1  | f2 |  f3
    -----+----+------
     123 | AA | 5.43
    (1 row)
    

関数

  • NULL の扱いを改善した jsonb_set() の代替バージョンが追加されました。 (Andrew Dunstan) (13)
  • 新関数 jsonb_set_lax() では新たな値として NULL が与えられた場合、null_value_treatment パラメータの指定に応じて様々な動作をさせることができます。

     'use_json_null'   JSON の null として扱う
     'raise_exception' 例外(ERROR)を出す
     'delete_key'      指定されたキーを削除する
     'return_target'   変更せず元の JSON を返す
    

    従来からの jsonb_set() 関数では、新たな値として NULL を与えると、戻り値が NULL になりました。

    (jsonb_set_lanx() 関数の実行例)
    db=# SELECT jsonb_set_lax('{"A": 123, "B": [1,2,3]}'::jsonb, '{B,2}', NULL,
           null_value_treatment => 'use_json_null');
             jsonb_set_lax
    -------------------------------
     {"A": 123, "B": [1, 2, null]}
    (1 row)
    
  • JSON Path 機能で .datetime() メソッドが追加されました。 (Nikita Glukhov, Teodor Sigaev, Oleg Bartunov, Alexander Korotkov) (13)
  • これにより、JSON の値をタイムスタンプに変換して、JSON Path 式の中で処理することができます。また、タイムゾーンを認識した出力に対応した JSON Path 関数群が追加されます。

  • ユニコード文字列を正規化する SQL関数 NORMALIZE() と、正規化を確認する IS NORMALIZED 構文が追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • pg_lsn型に集約関数 min() と max() が追加されました。 (Fabrízio de Royes Mello) (13)
  • これらは特に WAL に関するモニタリング問い合わせに有用です。

  • UTF-8 以外のデータベースエンコーディングであっても、「E'\unnnn'」や「U&'\nnnn'」といったユニコードのエスケープを、そのエンコーディングに変換可能な任意の文字について指定できるようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • to_data() と to_timestamp() が英語以外の月名、日名を認識できるようになりました。 (Juan José Santamaría Flecha, Tom Lane) (13)
  • 認識できる名前は同じ書式パターンにおける to_char() 出力と同じです。

    (実行例)
    db=# set lc_time TO 'ja_JP.UTF8';
    
    db=# SELECT to_char('2010-04-01'::date, 'DD TMMONTH YYYY');
       to_char
    -------------
     01 4月 2010
    (1 row)
    
    db=# SELECT to_timestamp('01 4月 2010', 'DD TMMONTH YYYY');
          to_timestamp
    ------------------------
     2010-04-01 00:00:00+09
    (1 row)
    
  • 日付時刻の書式パターンとして FF1 ~ FF6 が追加されました。これらは入力または出力の秒の小数桁数を指定します。 (Alexander Korotkov, Nikita Glukhov, Teodor Sigaev, Oleg Bartunov) (13)
  • これらのパターンは to_char()、to_timestamp() および、JSON Path の .datetime() で使用できます。

  • 日付時刻の書式パターン「SSSSS」が追加されました。これは SQL標準の「SSSS」の別名です。 (Nikita Glukhov, Alexander Korotkov) (13)
  • バージョン4 の UUID を生成する関数 gen_random_uuid() が追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • これまで、UUID生成関数は外部モジュールの uuid-ossp と pgcrypto にのみ在りました。

  • 最大公約数(GCD) と最小公倍数(LCM) の関数が追加されました。 (Vik Fearing) (13)
  • numeric型の平方根(sqrt)および自然対数(ln)関数の性能と正確さが改善されました。 (Dean Rasheed) (13)
  • numeric値を最大限正確に表現するのに必要となる小数点の右側の桁数を返すmin_scale() 関数が追加されました。 (Pavel Stehule) (13)
  • 例:
    db=# SELECT min_scale('1.2345000');
     min_scale
    -----------
             4
    (1 row)
    
  • 末尾のゼロを除くことで numeric値の桁数を減ずる関数 trim_scale() が追加されました。 (Pavel Stehule) (13)
  • db=# SELECT trim_scale('1.2345000');
     trim_scale
    ------------
         1.2345
    (1 row)
    
  • 距離演算子の反転が一通り追加されました。 (Nikita Glukhov) (13)
  • 一例として、これまでは「point <-> line」だけ使用できましたが、これからは「line <-> point」も使用できるようになります。

  • 全てのトランザクションID関数について xid8 型に対応したものが追加されました。 (Thomas Munro) (13)
  • これまでの xid に基づく関数(txid_で始まる関数群)は、後方互換性のために未だ残されています。新たな関数との対応は下記の通りです。

     txid_current()               pg_current_xact_id()
     txid_current_if_assigned()   pg_current_xact_id_if_assigned()
     txid_current_snapshot()      pg_current_snapshot()
     txid_snapshot_xip()          pg_snapshot_xip()
     txid_snapshot_xmax()         pg_snapshot_xmax()
     txid_snapshot_xmin()         pg_snapshot_xmin()
     txid_visible_in_snapshot()   pg_visible_in_snapshot()
     txid_status()                pg_xact_status()
    
  • get_bit() と set_bit() が 256MB を超える bytea値の引数に対応しました。 (Movead Li) (13)
  • offset引数のデータ型が int から bigint に変更されています。

  • アドバイザリロック関数群が一部の並列操作で使用できるようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • PARALLEL UNSAFE であったものが PARALLEL RESTRICTED に変更されたため、依然としてパラレルワーカーでの実行はできませんが、パラレルリーダーからは実行できます。

  • 拡張におけるオブジェクトの依存性を削除できるようになりました。 (Álvaro Herrera) (13)
  • 関数、マテリアライズドビュー、インデックス、トリガについて、依存性削除が可能で、このために ALTER ... NO DEPENDS ON EXTENSION ... 構文が追加されました。

PL/pgSQL

  • PL/pgSQL の単純な式の性能が改善されました。 (Tom Lane, Amit Langote) (13)
  • IMMUTABLE な式を使用する PL/pgSQL関数の性能を改善しました。 (Konstantin Knizhnik) (13)
  • 例えば以下のコードは、プラス演算子や比較演算子が同じ引数に同じ結果を返す IMMUTABLE な演算子であり、それらが繰り返し評価されるため、本修正で大幅に高速化されます。

      WHILE i < 10000000 LOOP
        i := i + 1;
      END LOOP;
    

クライアントインターフェイス

  • libpq を使ったクライアントが暗号化接続に対してチャネルバインディングを要求できるようになりました。 (Jeff Davis) (13)
  • libpq の接続パラメータ channel_binding を使用することで、TLS接続の相手にユーザのパスワードを知っていることを証明させます。これは中間者攻撃を防止します。

  • 暗号化接続に対して許容する TLSバージョンの最小、最大を指定するlibpq 接続パラメータが追加されました。 (Daniel Gustafsson) (13)
  • パラメータ名は ssl_min_protocol_version と ssl_max_protocol_version です。デフォルトの最小TLSバージョンは TLS 1.2 です。以前は libpqクライアント側で最小TLSバージョンの指定は無かったため、これは振る舞いの変更と言えます。

  • クライアント証明書のロックを解除するパスワードが使用可能になりました。 (Craig Ringer, Andrew Dunstan) (13)
  • libpq の sslpassword 接続パラメータでパスワードを与えることができます。

  • libpq が DER形式でバイナリエンコードされたクライアント証明書に対応しました。 (Craig Ringer, Andrew Dunstan) (13)
  • ecpg の「EXEC SQL elif」指示子が正しく動作するように修正されました。 (Tom Lane) (13)
  • これまで elif は、 endif に続く ifdef と同様に振る舞っていました。そのため、同じ if ブロックの手前の分岐で成功しているのに、elif 分岐や続く分岐についても展開されてしまっていました。

    明らかな誤動作ですが、既存コードの振る舞いに影響するため、メジャーバージョンアップでの修正となりました。

    報告された誤動作例: 択一であるはずの変数定義が二つ現れている
    
    exec sql define itype 1;
    int main(void)
    {
        exec sql begin declare section;
        exec sql ifdef itype;
            int var1;
        exec sql elif ntype;
            numeric var1;
        exec sql else;
            float var1;
        exec sql endif;
        exec sql end declare section;
    }
    
       ↓ ecpg適用後
    
    int main(void)
    {
     int var1 ;
     float var1 ;
    }
    

クライアントアプリケーション

psql
  • psql のデフォルトプロンプトにトランザクション状態が加わりました。 (Vik Fearing) (13)
  • トランザクション状態は従来からプロンプト変数に %x で指定可能でしたが、それがデフォルトになりました。

    (psqlプロンプト出力例)
    db=# BEGIN;
    BEGIN
    db=*# SELECT 1/0;
    ERROR:  division by zero
    db=!# ROLLBACK;
    ROLLBACK
    db=#
    
  • psql のプロンプト2 をプロンプト1 と同じ幅の空白にできるようになりました。 (Thomas Munro) (13)
  • これは PROMPT2 変数に %w を設定して実現できます。プロンプト2は SQL文が未だ終わっていないときに改行すると現れるものです。

    (psqlプロンプト出力例)
    db=# \set PROMPT2 '%w'
    db=# SELECT col1, col2, col3 FROM tbl1
           JOIN tbl2 USING (key1)
           WHERE tbl1.col2 = 123456;
    
  • psql の \g と \gx コマンドで、SQLコマンド毎に\pset の出力オプションを指定できるようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • 以下のように使用します。

    db=# SELECT * FROM t1 ;
     id | v
    ----+----
      1 | AA
      2 |
    (2 rows)
    
    db=# SELECT * FROM t1 \g (border=2 null=*NIL*)
    +----+-------+
    | id |   v   |
    +----+-------+
    |  1 | AA    |
    |  2 | *NIL* |
    +----+-------+
    (2 rows)
    
  • 演算子クラスや演算子族などを表示する psqlコマンドが追加されました。 (Sergey Cherkashin, Nikita Glukhov, Alexander Korotkov) (13)
  • 新たなコマンドは以下の通りです。

      \dAc 演算子クラスの一覧
      \dAf 演算子族の一覧
      \dAo 演算子族と演算子の一覧
      \dAp 演算子族とサポート関数の一覧
    
  • psql の \dt+ と関連するコマンドでテーブルの永続性を表示するようになりました。 (David Fetter) (13)
  • テーブル、インデックス、ビューについて、「+」を伴う冗長モードのときに、permanent か temporary か unlogged かが表示されます。

    (出力例)
    db=# \d+
                                 List of relations
      Schema   | Name  | Type  |  Owner   | Persistence |  Size   | Description
    -----------+-------+-------+----------+-------------+---------+-------------
     pg_temp_3 | tmp1  | table | postgres | temporary   | 8 kB    |
     public    | tbl1  | table | postgres | permanent   | 16 kB   |
     public    | utbl1 | table | postgres | unlogged    | 0 bytes |
    
  • psql の \d の TOASTテーブルに対する出力が改善されました。 (Justin Pryzby) (13)
  • 紐づく通常テーブル名や、付加されているTOASTテーブルのインデックスも報告されるようになりました。

  • psql の \e コマンドの後の再表示が改善されました。 (Tom Lane) (13)
  • エディタを終了するとき、問い合わせがセミコロンや \g で終了していない場合には、問い合わせバッファの内容が表示されるようになります。

  • psql に \warn コマンドが追加されました。 (David Fetter) (13)
  • これは \echo と似ていますが、標準出力ではなく標準エラーにテキストを出力します。

  • --help の出力に PostgreSQL のホームページ の URL が追加されました。 (Peter Eisentraut) (13)
pgbench
  • pgbench が accounts をパーティションテーブルとして作成できるようになりました。 (Fabien Coelho) (13)
  • これにより単純なパーティショニングの性能テストが容易にできます。

  • pgbench のコマンド \aset が追加されました。 (Fabien Coelho) (13)
  • \gset と似ていますが、複数の問い合わせに使用できます。

  • pgbench が初期データをクライアント側ではなくサーバ側で生成できるようになりました。 (Fabien Coelho) (13)
  • pgbench が --show-script オプションで組み込みのスクリプトを表示できるようになりました。 (Fabien Coelho) (13)

サーバアプリケーション

  • pg_basebackup でベースバックアップに欠損や不整合がないことを保証するマニフェストが生成され、検証できるようになりました。 (Robert Haas) (13)
  • ベースバックアップの検証は pg_verifybackup コマンドで行えます。マニフェストは pg_start_backup/pg_stop_backup 関数では生成されません。

    (出力例: ベースバックアップの検証に成功した場合)
    $ pg_verifybackup backup
    backup successfully verified
    
    (出力例: ベースバックアップを破壊し、検証に失敗した場合)
    $ rm backup/base/16384/16397
    $ dd if=/dev/zero of=backup/base/16384/16398 bs=8K count=1
    1+0 records in
    1+0 records out
    8192 bytes (8.2 kB) copied, 0.000652167 s, 12.6 MB/s
    $ pg_verifybackup backup
    pg_verifybackup: error: "base/16384/16397" is present in the manifest but not on disk
    pg_verifybackup: error: checksum mismatch for file "base/16384/16398"
    
  • pg_basebackup がデフォルトで合計バックアップサイズを計算するようになりました。 (Fujii Masao) (13)
  • これは pg_stat_progress_basebackup ビューでベースバックアップの進捗状況を表示するのに必要です。必要ない場合は --no-estimate-size オプションで無効にできます。以前は -P/--progress オプションを指定した場合のみ計算していました。

  • pg_rewind にスタンバイの設定を行う -R/--write-recovery-conf オプションが追加されました。 (Paul Guo, Jimmy Yih, Ashwin Agrawal) (13)
  • これは pg_basebackup のオプションと同じもので、standby.signal を作成し、postgresql.auto.conf に必要な設定を追加します。

  • pg_rewind でターゲット側のデータベースクラスタの restore_command パラメータを使って必要な WAL を取得できるようになりました。 (Alexey Kondratov) (13)
  • これは -c/--restore-target-wal オプションで有効にできます。

  • pg_rewind でデータベースクラスタの同期前に自動的にクラッシュリカバリを行うようになりました。 (Paul Guo, Jimmy Yih, Ashwin Agrawal) (13)
  • 以前は、クラッシュ後はデータベースサーバを一旦起動し、クラッシュリカバリを行う必要がありました。これは --no-ensure-shutdown オプションを使って無効にできます。

  • pg_waldump で表示される準備されたトランザクション(PREPARE TRANSACTION)に関する情報量が増えました。 (Fujii Masao) (13)
  • GID (グローバルトランザクション識別子) 等が含まれ、二相コミットの障害調査に役立ちます。

    (PREPARE TRANSACTION の WAL 出力例)
    rmgr: Transaction len (rec/tot):    138/   138, tx:        491, lsn: 0/0163FEB8, prev 0/0163FE80, desc: PREPARE gid test: 2020-09-25 08:06:54.331912 JST
    
  • pg_waldump に、エラー以外の出力を抑える -q/--quiet オプションが追加されました。 (Andres Freund, Robert Haas) (13)
  • pg_dump に外部サーバ(の外部テーブル)からデータをダンプする--include-foreign-data オプションが追加されました。 (Luis Carril) (13)
  • vacuumdb で VACUUM を並列して実行できるようになりました。 (Masahiko Sawada) (13)
  • これは -P/--parallel オプションで有効にできます。

  • reindexdb で REINDEX を並列して実行できるようになりました。 (Julien Rouhaud) (13)
  • これは -j/--jobs オプションで有効にできます。

  • dropdb で接続中のセッションを切断し、データベースを削除できるようになりました。 (Pavel Stehule) (13)
  • これは -f/--force オプションで有効にできます。

  • createuser でスーパーユーザ権限の有無を指定する -a/--adduser および -A/--no-adduser オプションが削除されました。 (Alexander Lakhin) (13)
  • これらは、以前にオプション名が適切でないため、-s/--superuser および -S/--no-superuser オプションに置き換えられており、これまで互換性のために残されていました。

  • pg_upgrade で移行先の実行ファイルが格納されたディレクトリを指定する --B/--new-bindir オプションのデフォルトとして自身が格納されたディレクトリを使うようになりました。 (Daniel Gustafsson) (13)

ドキュメント

  • マニュアルに用語集が追加されました。 (Corey Huinker, Jürgen Purtz, Roger Harkavy, Álvaro Herrera) (13)
  • マニュアル内の関数および演算子の表が分かりやすい書式に変更されました。 (Tom Lane) (13)
  • マニュアルで使っている DocBook が 4.5 にアップグレードされました。 (Peter Eisentraut) (13)

ソースコード

  • Visual Studio 2019 でのビルドに対応しました。 (Haribabu Kommi) (13)
  • MSYS2 でのビルドに対応しました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • PowerPC コンパイラ向けに compare_exchange および fetch_add アセンブリ言語コードが追加されました。 (Noah Misch) (13)
  • 全文検索の Snowball語幹辞書が更新されました。 (Panagiotis Mavrogiorgos) (13)
  • これにより、ギリシャ語の語幹処理に対応し、デンマーク語およびフランス語の語幹処理が改善されます。

  • Windows 2000 の対応が打ち切られました。 (Michael Paquier) (13)
  • 非 ELF の BSD システムの対応が打ち切られました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • Python 2.5.x 以前の対応が打ち切られました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • OpenSSL 0.9.8 および 1.0.0 の対応が打ち切られました。 (Michael Paquier) (13)
  • configure の --disable-float8-byval および --disable-float4-byval オプションが削除されました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • これらは、バージョン0 呼び出し規約の C言語関数との互換性のために残されていましたが、これからは使えなくなります。

  • プランナのフック関数に問い合わせ文字列を渡すようになりました。 (Pascal Legrand, Julien Rouhaud) (13)
  • TRUNCATE のフックが追加されました。 (Yuli Khodorkovskiy) (13)
  • TLS 初期化のフックが追加されました。 (Andrew Dunstan) (13)
  • デフォルトの Unix ドメインソケットディレクトリを定義する DEFAULT_PGSOCKET_DIR を空にしてビルドできるようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • これにより、Unix ドメインソケットには対応するけれどもデフォルトでは無効にするということができます。

  • Unixプラットフォームで System V リソースキーの競合が軽減されました。 (Tom Lane) (13)
  • キーの生成はポート番号でなく、データディレクトリの iノード番号をもとに行われるようになりました。

  • オペレーティングシステムの機能で秘密情報を含むメモリを確実に消去するようになりました。 (Peter Eisentraut) (13)
  • これにより、例えば、メモリ内に格納されたパスワードが消去されます。

  • C言語ヘッダファイルの互換性を検査する headerscheck スクリプトが追加されました。 (Tom Lane) (13)
  • 内部リストを cons-cell (値と次のセルへのリンクを持つオブジェクト) をつなげたものでなく、配列で実装するようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • これにより、多くのオブジェクトにアクセスする問い合わせの性能が向上します。

  • 全文検索の問い合わせ (tsquery) を実行する TS_execute() の API が変更されました。 (Tom Lane, Pavel Borisov) (13)
  • TS_execute() のコールバック関数は、これまで問い合わせに一致するか否かを返す仕様でしたが、これからはそれらに加えて不明を返す必要があります。これにより、重み付けをした問い合わせでインデックスを使っても、正しい結果を取得できるようになりました。

    (修正前はインデックスを使うと、重み付け問い合わせで正しい結果が取得できない)
    db=# CREATE TABLE test_weight (fts tsvector);
    db=# INSERT INTO test_weight VALUES ('crew:1C shuttl:2C'::tsvector);
    db=# SELECT * FROM test_weight WHERE fts @@ to_tsquery('shuttle & !crew:a');
              fts
    -----------------------
     'crew':1C 'shuttl':2C
    (1 行)
    
    db=# CREATE INDEX ON test_weight USING gin (fts);
    db=# SET enable_seqscan TO off;
    db=# SELECT * FROM test_weight WHERE fts @@ to_tsquery('shuttle & !crew:a');
     fts
    -----
    (0 行)
    

追加モジュール

  • 拡張に trusted と指定できるようになりました。 (Tom Lane) (13)
  • 拡張は、これまでスーパーユーザでしかインストールできませんでしたが、これからは trusted と指定されたものであれば、データベースの CREATE 権限を持つユーザでもインストールできます。これにより、手続き言語の情報を格納するシステムカタログpg_pltemplate が pg_available_extension_versions に統合され、削除されました。

  • postgres_fdw でスーパーユーザ以外でもパスワードなしに外部サーバに接続できるようになりました。 (Craig Ringer) (13)
  • パスワードの要否はスーパーユーザでユーザマッピングの password_requiredオプションで設定できます。パスワードを不要にすると、データベースサーバの起動ユーザとして認証されるようになるため、.pgpass ファイルなどを使ってスーパーユーザとして接続されないように注意が必要です。

  • postgres_fdw で証明書認証に対応しました。 (Craig Ringer) (13)
  • 証明書はユーザごとに異なるものが使えます。

  • sepgsql で TRUNCATE のアクセス制御に対応しました。 (Yuli Khodorkovskiy) (13)
  • SQL と PL/Perl 間で論理値を変換する拡張 bool_plperl が追加されました。 (Ivan Panchenko) (13)
  • pg_stat_statements で SELECT に FOR UPDATE があるか否かを区別して問い合わせ実行統計を収集できるようになりました。 (Andrew Gierth, Vik Fearing) (13)
  • pg_stat_statements で実行計画の作成時間を収集できるようになりました。 (Julien Rouhaud, Pascal Legrand, Thomas Munro, Fujii Masao) (13)
  • これまでは実行時間しか収集できませんでした。これは track_planning パラメータを on に設定すれば有効にできます。

  • ltree でパターン一致を行う lquery の構文が ! (否定) をより論理的に処理するように改善されました。 (Filip Rembialkowski, Tom Lane, Nikita Glukhov) (13)
  • これまで「*.!foo.*」は「foo」を含むラベル経路には一致しませんでしたが、これからは「foo」が含まれていても「foo」でないラベルが 1つ以上ある場合には一致するようになります。

    また、「*」以外の任意のラベルでも {} で一致回数を指定できるようになりました。

    (ltree型の lt列を持つテーブルに対する問い合わせ例)
    db=# SELECT * FROM t158;
     id |    lt
    ----+-----------
      1 | foo
      2 | a.foo.org
      3 | a.bar.org
    (3 rows)
    
    db=# SELECT * FROM t158 WHERE lt ~ '*.!foo.*';
    
    (13.0 での応答)
     id |    lt
    ----+-----------
      2 | a.foo.org
      3 | a.bar.org
    (2 rows)
    
    (12.x での応答)
     id |    lt
    ----+-----------
      3 | a.bar.org
    (1 row)
    
  • ltree、lquery および ltxtquery型がバイナリI/O に対応しました。 (Nino Floris) (13)
  • dict_int で整数の符号を無視する absval パラメータが追加されました。 (Jeff Janes) (13)
  • adminpack にファイルの fsync を行う pg_file_sync() 関数が追加されました。 (Fujii Masao) (13)
  • pageinspect に t_infomask/t_infomask2 の値を人間が読みやすい形式で出力するheap_tuple_infomask_flags 関数が追加されました。 (Craig Ringer, Sawada Masahiko, Michael Paquier) (13)
  • pageinspect で B-treeインデックスの重複排除に関する情報が出力されるようになりました。 (Peter Geoghegan) (13)