SRA OSS による PostgreSQL 開発への貢献(2025年)

はじめに

PostgreSQL は、世界中の開発者や企業が協力することで発展してきたコミュニティベースのオープンソース RDBMSです。SRA OSS は、1996年の PostgreSQL 初版リリースの直後からコミュニティの一員として、PostgreSQL 本体の開発、周辺ツールの開発、コミュニティ運営、ドキュメント翻訳など、多岐にわたって活動を続けてきました。本記事では、2025 年における SRA OSS メンバーのPostgreSQL 本体および関連ツールの開発への貢献内容を紹介します。

SRA OSS 在籍の PostgreSQL Contributors

PostgreSQL コミュニティでは、コード、ドキュメント、議論、コミュニティ活動などを通じ、継続的に貢献している個人を「PostgreSQL Contributor」として認定しています。

現在、SRA OSS には以下5名の PostgreSQL Contributor が在籍しています。なかでも顧問の石井 達夫と取締役の藤井 雅雄は、特に多大な影響を与えてきた Major Contributor として認定されています。また、この2人は PostgreSQL 本体コードへのコミット権限を持つコミッタ(Committer)でもあります。

  • Major Contributors(かつ、Committer)
    • 石井 達夫(顧問)
    • 藤井 雅雄 (取締役)
  • Contributors
    • 長田 悠吾
    • 鳥越 淳
    • 高塚 遥

2025年の PostgreSQL 開発への貢献

以下では、PostgreSQL コミュニティの Major Contributor かつコミッタである Robert Haas 氏のブログ記事「 Who Contributed to PostgreSQL Development in 2025?」で公開されている解析データを基に、SRA OSS メンバーが行った具体的な PostgreSQL 開発への貢献を紹介します。

なお、公開されているオリジナルデータでは、パッチの作者情報は git のコミットログから自動的に決定されていますが、本記事では、Robert Haas 氏の確認の上で、コミットログをもとに一部のコミットの作者情報を修正したデータを使用しています。

PostgreSQL にコミットされたパッチ

PostgreSQL の開発は、提案されたパッチについてコミュニティで議論・レビューが行われ、その後コミットされることで進められます。

2025年にコミットされたパッチのうち、SRA OSS メンバーが主要作者(中心的にコードを書いた者)として関わったものは以下のとおりです。

主要作者 追加行数 コミット数 主な内容
長田悠吾 671 24 MERGE 文の同時更新処理まわりの不具合修正、psql の leakproof 情報出力およびタブ補完改善、pgbench のパイプラインモード関連の不具合修正、ENUM 作成時のエラーメッセージ改善、vacuumdb の不具合改善
藤井雅雄 623 50 論理レプリケーションおよび pgoutput の改善とドキュメント整備、レプリケーション関連の不具合修正、psql / pg_dump / pg_restore / pgbench などツール類の改善・不具合修正
石井達夫 243 8 IGNORE NULLS を伴うウィンドウ集約関数処理の不具合修正、文字列処理用 API の改良
高塚遥 216 1 ALTER DEFAULT PRIVILEGES に large objects のデフォルト権限設定を追加
鳥越淳 70 6 スタンバイ接続拒否時のエラーメッセージ改善、psql タブ補完改善、pg_log_backend_memory_contexts() や pg_aios ビューの改善
三和陽菜 2 1 psql の PREPARE 文に対するタブ補完を改善

なお、パッチによって複数人の共同作業により作成されたものがありますが、その場合で、主要作者でないコミットについては上表の数字に含まれていません。

メーリングリスト(pgsql-hackers)における議論

PostgreSQL 開発は、主に pgsql-hackers と呼ばれるメーリングリストでの議論を通じて進められます。このメーリングリストの中で、機能改善やバグ修正の提案、パッチの投稿、レビューなど、開発に関するやりとりが日々が行われています。

2025年にSRA OSSメンバーが pgsql-hackers に投稿はした議論数は以下のとおりです。

氏名 投稿数
藤井 雅雄 495
長田 悠吾 274
石井 達夫 148
鳥越 淳 80
高塚 遥 2
三和 陽菜 2

コミッタの活動

コミッタはパッチをPostgreSQL コードに反映する権限を持っていますが、その際には自分が書いていないパッチについても、その適用可否を慎重に判断して、品質を確保したうえでコミットするという、重要な役割をもっています。

以下は、SRA OSS に在籍するコミッタによる、自分が主要作者でないパッチのコミット実績を集計したものです。

氏名 コミットした行数 コミット数
藤井 雅雄 1688 60
石井 達夫 1112 3

サードパーティーツールの開発

SRA OSS は PostgreSQL 本体だけでなく、関連ツールや拡張モジュールの開発にも取り組むことで、周辺エコシステムの発展に貢献しています。ここでは、SRA OSS が中心開発者として携わる Pgpool-II pg_ivm の活動について紹介します。

Pgpool-II

Pgpool-IIはPostgeSQL 用のクラスタ管理ツールであり、2025年は 2 回のメジャーリリースと複数のマイナーリリースが行われました。

  • Pgpool-II 4.6.0 (2025/02/28)
    • ログ管理とクエリキャッシュ操作のPCPコマンド追加、など
  • Pgpool-II 4.7.0 (2025/12/23)
    • フロントエンド/バックエンドプロトコルバージョン3.2サポート
    • watchdogとheartbeat receiverのセキュリティ強化、など
  • そのほか、不具合修正を含む計6回のマイナーリリース

pg_ivm

pg_ivm は、マテリアライズドビューの増分メンテナンス機能(Incremental View Maintenance)をPostgreSQL に提供する拡張モジュールです。2025年には以下のリリースが行われました。

  • v1.10(2025/03/11):不具合修正
  • v1.11(2025/05/26):不具合修正
  • v1.12(2025/09/04):PostgreSQL 18 対応
  • v1.13(2025/10/20):外部結合ビューに対応

まとめ

2025 年における SRA OSS のPostgreSQL 本体および関連ツールの開発への貢献を紹介しました。ここで紹介したもの以外にも、日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)の運営、ドキュメントの日本語翻訳、ビルドファーム提供など、多面的な活動を通して PostgreSQL コミュニティに貢献しています。

こうした活動を通して、SRA OSS は今後も PostgreSQL とそのエコシステムの発展に貢献し続けていきます。