FOSSASIA PGDay 2026 参加レポート

2026年3月9日〜10日にタイ・バンコクで開催された FOSSASIA Summit 2026 に参加し、併設の FOSSASIA PGDay 2026 で発表しましたので、その内容を報告いたします。

はじめに

2026年3月、アジア最大級の FOSS カンファレンスである FOSSASIA Summit 2026 が開催され、その併設イベントとして PostgreSQL PGDay が開催されました。
PGDay は PostgreSQL に特化した 1 日カンファレンスで、世界各地から PostgreSQL 開発者・ユーザが集まる技術イベントです。
SRA OSS では昨年も FOSSASIA PGDay に参加しましたが、今年は参加に加え、2名がスピーカーとして登壇しました。本記事では、FOSSASIA および PGDay の概要とともに、SRA OSS からの発表内容を中心にご紹介します。

FOSSASIA Summit および PostgreSQL PGDay について

FOSSASIA Summit は、オープンソースソフトウェアやオープンテクノロジーをテーマとした国際カンファレンスです。
ソフトウェア開発だけでなく、OS、クラウド、データベース、AI、セキュリティなど、幅広い分野のセッションが用意され、アジア圏を中心に世界各国から参加者が集まります。

その中で開催される PostgreSQL PGDay は、PostgreSQL の開発や運用、拡張、エコシステムに焦点を当てたイベントです。PostgreSQL の内部構造、性能チューニング、高可用性、運用、セキュリティなど、実運用に直結するテーマが幅広く扱われました。

SRA OSS からの発表

Pgpool-II による PostgreSQL 高可用性と性能最適化

基盤技術グループのプリンシパルエンジニア でPgpool-II 開発者でもある彭 博(ペン ボ)からは、「Pgpool-II: An Introduction to High-Availability and Performance Optimization for PostgreSQL」と題し、PostgreSQL 高可用性構成における課題と、それを解決する Pgpool-II の役割について紹介しました。

PostgreSQL にはストリーミングレプリケーションなどの仕組みがありますが、自動フェイルオーバー/フェイルバックは標準では提供されておらず、読み書きの振り分けやロードバランシングはアプリケーション側で実装が必要といった課題があります。Pgpool-II はクライアントと PostgreSQL の間に配置されるミドルウェア で、アプリケーションを大きく変更することなく「自動フェイルオーバー」や「クエリのロードバランシング」といった機能を提供することで、これらの課題を解決します。また、「コネクションプーリング」「インメモリクエリキャッシュ」といったパフォーマンス向上機能も提供しています。

さらに、Pgpool-II 自体が単一障害点になることを避けるための「Watchdog 機能」についても解説されました。Watchdog 機能により「複数のPgpool-II ノード間での死活監視」「リーダー選出」「Virtual IP の自動切替」「スプリットブレイン防止」といった仕組みが提供され、Pgpool-II 自体も冗長化可能であることが紹介されました。

pg_ivm: 高速なマテリアライズドビュー更新

技術開発室の主席研究員でPostgreSQLコントリビュータでもある長田悠吾(ながたゆうご)からは、「pg_ivm: Extension for Fast Materialized View Maintenance and Recent Improvements」というタイトルで、自身が開発するPostgreSQL 拡張モジュールである pg_ivm について発表しました。

pg_ivm は増分ビューメンテナンス(Incremental View Maintenance, IVM) という、高速なマテリアライズドビューの更新を実現する機能を提供する拡張です。通常のマテリアライズドビューでは、元テーブルが更新された後には REFRESH MATERIALIZED VIEW によりビュー全体を再計算する必要がありますが、IVM では更新された差分のみを計算してビューに適用することで、更新コストを大きく削減します。

具体的には、この拡張モジュールにより、テーブル更新時に自動かつ高速に更新されるIMMV(Incrementally Maintainable Materialized View)と呼ばれるビューを作成できます。テーブル更新時のオーバーヘッドなどいくつかの考慮点はありますが、これを用いることで、ビューの更新が通常の REFRESH と比べて数百倍高速となるケースも示されました。

また、最近の改善として外部結合ビューへの対応が追加されたほか、将来の機能改善として、(テーブル更新時に自動で行うのではなく)手動によるビューの増分更新や、パーティションテーブル、論理レプリケーションへの対応などが検討されていることも紹介されました。

その他の発表

PGDay では、SRA OSS の発表以外にも、PostgreSQL の現在と将来に関わる多様なセッションが行われました。

基調講演では、PostgreSQL の30年の歴史や、PostgreSQL コミュニティとその貢献方法についての紹介が行われました。PostgreSQL の開発や内部構造に関係する発表としては、PostgreSQL 18 新機能解説や、データベースのメタ情報を格納するシステムカタログを深掘りするセッション、近年のインデックスの改善について解説するセッションがありました。

また、Pgpool-II や pg_ivm 以外にも、クエリ実行を外部の Apache DataFusion クエリエンジンで行える拡張モジュール pg_fusion や、LIKE/ILIKE を用いた文字列のマッチングを高速化するためのインデックス Biscuit といったツールを紹介するセッションもあり、PostgreSQL エコシステムの広がりを感じられるプログラムとなっていました。

おわりに

今年の FOSSASIA PGDay も、PostgreSQL の進化とコミュニティの活発さを改めて実感できるイベントでした。SRA OSS としても、PostgreSQL および Pgpool-II や pg_ivm といったツールの開発と情報発信を通じて、引き続き PostgreSQL コミュニティの発展に貢献していきます。